大きな地震のあとによく聞くのが、「とにかく公式情報を待とう」です。もちろん、これは正しいです。正しいんですが、それだけで全部解決するなら、災害時の情報空間はもう少しおとなしいはずなんですよね。現実はむしろ逆で、公式発表が出るまでの時間や、公式発表そのものに含まれる“不確実です”という注意書きのすき間に、デマや断定口調の投稿がスッと入ってきます。嫌なスキマ家具みたいに、妙に収まりがいい。

だから今回の中心問いはここです。大地震のあと、なぜ「公式情報を待て」だけでは足りないのか。答えを先に言うと、災害時に出回る情報は全部同じ種類ではないからです。いま観測された事実なのか、確率が相対的に上がったという注意喚起なのか、ただの映像つき断定なのか。この仕分けができないと、公式情報を見てもなお、変な情報に引っ張られます。

三陸沖地震でデマ投稿相次ぐ 過去映像やフェイク動画を使い約200万回閲覧されたものも 専門家「情報の比較が重要」|FNNプライムオンライン
三陸沖地震でデマ投稿相次ぐ 過去映像やフェイク動画を使い約200万回閲覧されたものも 専門家「情報の比較が重要」|FNNプライムオンライン

三陸沖を震源として20日に発生したマグニチュード7.7の地震で、SNS上では過去の津波映像などを使ったデマ投稿が拡散している。政府は後発地震への注意喚起をすると共にデマ情報にも注意を呼びかけている。専門家は、情報源の確認などの重要性を指摘している。20日夕方に発生した三陸沖を震源とするマグニチュード7.7の地震は、青森県階上町で震度5強を、青森・岩手・宮城の各地で震度5弱を観測した。津波警報も発表され、岩手県の久慈港では80センチの津波が観測されている。今回の地震を受け、気象庁などは「北海道・…

今回の登場人物

  • FNNプライムオンライン: 今回の入口記事です。三陸沖地震のあと、SNSで過去映像やフェイク動画を使った投稿が広がり、約200万回閲覧されたものもあったと報じました。
  • 気象庁: 天気だけでなく、地震や津波の公式情報を出す役所です。今回大事なのは、「何が起きたか」を出すだけでなく、「どこまで分かっていて、どこからは不確実か」も一緒に示している点です。
  • 北海道・三陸沖後発地震注意情報: 北海道の根室沖から東北の三陸沖の想定震源域や周辺で、モーメントマグニチュード7.0以上の地震が起きたときに出る情報です。名前は長いですが、意味は「巨大地震の可能性が平常時より相対的に高まっているので、1週間ほど備え直してください」です。「次は何時何分に来ます」ではありません。
  • モーメントマグニチュード(Mw): 地震そのものの規模を見る指標です。震度が「どこでどれだけ揺れたか」なら、Mwは「地震の本体サイズはどれくらいか」を見る感じです。
  • デマ投稿: 事実でない情報や、古い映像を今回の出来事のように見せる投稿です。災害時は不安が強いので、断定口調の雑な投稿ほど妙に強そうに見えることがあります。見た目だけ番長、みたいなやつです。

何が起きたか

FNNプライムオンラインによると、2026年4月20日夕方に三陸沖を震源とするマグニチュード7.7の地震が起き、青森県階上町で震度5強、青森・岩手・宮城の各地で震度5弱を観測しました。岩手県の久慈港では80センチの津波も観測されています。

その後、SNSでは今回の地震とは別の揺れの映像や、東日本大震災の津波映像、2025年のカムチャツカ半島付近の地震による津波映像とみられる動画が、「今回の日本の津波」みたいな顔で拡散しました。FNNは、約200万回閲覧された投稿もあったと伝えています。災害時のデマ、伸びるときは本当に伸びる。いらんところだけロケットなんです。

一方で気象庁は、4月20日16時52分の三陸沖の地震について精査した結果、同日19時30分に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表しました。ここで大事なのは、この情報が「後でもっと大きい地震が必ず来る」という宣言ではないことです。気象庁は、この情報を「大規模地震の発生可能性が平常時より相対的に高まっている」と知らせるもので、発生時期や場所、規模を確度高く予測する情報でも、予知でもないとはっきり書いています。

ここが本題

つまり、災害時に私たちが受け取る情報は、ひとまとめに「情報」ではありません。少なくとも三つに分けて読む必要があります。

一つ目は、すでに観測された事実です。どこで地震が起き、どこでどの震度が観測され、津波が何センチだったか。これは「もう起きたこと」の情報です。

二つ目は、今後への注意喚起です。後発地震注意情報はまさにこれで、「可能性が相対的に高まったから備え直してほしい」という種類の情報です。強い言い方をすれば、未来の確定情報ではなく、行動のための警戒情報ですね。

三つ目が、SNSの断定投稿です。これは見た目が派手なわりに、中身は一番あやしいことがある。しかも厄介なのは、二つ目の「不確実だけど大事な注意情報」があるときほど、三つ目の「だから近いうちに必ず来る」「もう津波が来ている」といった雑な断定が、もっともらしく見えてしまうことです。

ここで「公式だけ見ろ」と言っても、まだ足りません。なぜなら、公式情報の側も「分かること」と「まだ分からないこと」を分けて出しているからです。気象庁は、大きな地震のあとには根拠のないうわさが出るとしたうえで、具体的な日時を指定した地震予知は、現在の科学的知見からは「間違いなくデマ」と明記しています。同時に、最大震度5弱以上が観測された場合などは、どのくらいの期間警戒すべきか、どの程度の揺れに注意すべきかを、地震発生の約1〜2時間後から会見やホームページで公式に出すとも説明しています。

要するに、公式情報は「全部分かりました」ではなく、「ここまでは観測できた、ここから先は確率としてこう考える、だからこう備えて」と出てくるんです。ここを読まずに「公式が何か言ってるから、とにかく大変らしい」だけで受け取ると、SNSの大げさな断定と頭の中で混線します。

何を比べて信じるべきか

作法は、そんなにオシャレな秘密道具ではありません。かなり地味です。でも地味なやつほど役に立ちます。白ごはんみたいに。

まず見るべきは、発信元です。気象庁なのか、自治体なのか、報道機関なのか、見知らぬ個人アカウントなのか。FNN記事でも、日本大学危機管理学部の福田充教授は、発信している人が信用できるか確認することが重要だと話しています。

次に、情報の種類です。「観測された事実」なのか、「可能性が相対的に高い」という注意なのか、「映像つきの主張」なのか。たとえば「後発地震注意情報が出た」は事実です。でも「だから今夜必ず巨大地震が来る」は、そこから勝手に飛びすぎた解釈です。階段を一段ずつ降りればいいのに、いきなり3階から飛び降りる感じです。危ない。

そして、比較先を持つことです。福田教授は、ひとつの情報だけで判断せず、他の信頼できるメディアや情報と比較することが重要だと述べています。気象庁も、情報の送り手を確認し、科学的にきちんと説明されているか見極める必要があるとしています。つまり「公式を見る」で終わりではなく、「公式と報道の一致点はどこか」「動画は本当に今回のものか」「日時や場所は合っているか」を照らし合わせるわけです。

動画なら、過去に使われた映像ではないかを疑う。文章なら、時刻と場所が具体的かを見る。予言っぽい文なら、その時点でかなり赤信号です。気象庁がはっきり「具体的な日時を指定した地震の予知はデマ」と書いているので、ここは迷わなくて大丈夫です。

日本の読者にとっての意味

この話は、SNSの使い方マナー講座で終わる話ではありません。日本では地震が珍しくないぶん、「また情報が多すぎて分からない」という場面も珍しくない。だからこそ、災害時の情報リテラシーは、受験テクでもネット作法でもなく、生活技術に近いです。

とくに今回の後発地震注意情報みたいに、「危険はゼロではない。でも必ず起きるとも言えない」という、かなり人間に優しくない種類の情報が出るときほど、この技術がいります。不確実な公式情報と、断定的なデマが並んだとき、人はつい断定のほうに吸われがちです。文章が強いから、情報まで強そうに見える。でもそこ、見た目にだまされやすいポイントなんです。

必要なのは、公式を信じることに加えて、公式情報を正しく読むことです。観測事実なのか、注意喚起なのか、予知ではないという留保なのか。その区別がつけば、デマの入り込む余地はかなり減ります。

まとめ

大地震のあとに「公式情報を待て」が大事なのは間違いありません。ただ、それだけでは足りません。理由は、災害時に流れる情報には、観測された事実、可能性が高まったという注意情報、そして根拠の薄いSNS投稿が混ざって流れてくるからです。

今回の三陸沖地震でも、気象庁は後発地震への注意を呼びかける一方で、その情報は予知ではなく、極めて不確実性が高いと説明しました。だから私たちに必要なのは、「公式か非公式か」の二択ではなく、発信元、情報の種類、比較先を見ることです。公式を待つ。そのうえで、何と何を比べて信じるかまで知っておく。そこまで行って、ようやく災害時の情報に振り回されにくくなるわけです。

Sources