ヤマダHDとエディオンが一緒になる、と聞くと、まず浮かぶのは「家電屋さんがさらに巨大化するのか」です。たしかに、実現すれば売上高およそ2兆5000億円、店舗数は全国で1万店に迫る規模です。数字だけ見ると、冷蔵庫売り場にさらに冷蔵庫を積み上げたような迫力があります。

でも今回の本題は、大きい店がもっと大きくなることではありません。家電量販店が、メーカー品を仕入れて安く売るだけでは苦しくなり、自分たちで商品を企画し、物流をまとめ、顧客データを使って「何を作れば売れるか」まで握ろうとしていることです。売り場の勝負が、値札の赤さから商品設計の深さへ移っています。

売上高“2兆5000億円”チェーン誕生なるか ヤマダHDとエディオンが経営統合に向け基本合意 “薄利多売”から…独自商品が生き残りのカギ | TBS NEWS DIG (1ページ)
売上高“2兆5000億円”チェーン誕生なるか ヤマダHDとエディオンが経営統合に向け基本合意 “薄利多売”から…独自商品が生き残りのカギ | TBS NEWS DIG (1ページ)

家電量販店最大手のヤマダHDとエディオンが経営統合に向け、基本合意しました。実現すれば、売上高2兆5000億円規模の巨大チェーンが誕生します。ヤマダHD 山田昇 会長「企業を持続的に成長・発展させるには、よ… (1ページ)

今回の登場人物

  • ヤマダHD: 家電量販店最大手のグループです。家電販売だけでなく、住宅、リフォーム、金融などにも事業を広げています。
  • エディオン: 西日本を中心に強い家電量販店です。地域密着の店舗網と修理・サポートの導線を持ちます。
  • 経営統合: 会社を完全に吸収する合併とは限らず、今回は共同持株会社の下に両社を置く方向です。
  • PB商品: プライベートブランド商品のことです。小売店が自分のブランドで企画・販売する商品です。
  • SPA: 企画、製造、販売を一体で進めるやり方です。服で有名ですが、家電でも利益率を高める武器になります。

何が起きたか

TBSは6月5日、ヤマダHDとエディオンが経営統合に向けて基本合意したと報じました。統合が実現すれば、ヤマダHDの全国8000以上の店舗と、エディオンの1000店舗以上が合わさり、売上高はおよそ2兆5000億円になります。統合の予定時期は2027年10月1日で、両社のブランドは維持する方向です。

会見でヤマダHDの山田昇会長は、持続的な成長には大局的な選択が必要だと説明しました。エディオンの久保允誉会長も、同じ考えで事業を展開している相手としてヤマダHDを挙げました。つまり「大きくなれば安心」というより、「今のままだと厳しいから、違う勝ち方を作る」という話です。

記事で強調されていたのは、PB商品やSPA商品の開発力です。店舗には、くすみカラーの調理機器や、機能を絞って一般的な製品の半額ほどで売る洗濯乾燥機などが並んでいます。家電量販店の勝負が、メーカー品をどれだけ安く仕入れるかだけではなく、どんな商品を自分で作るかへ移っているわけです。

ここが本題

今回の中心問いは、「なぜ家電量販店同士がここまで大きくなる必要があるのか」です。

答えは、安売りの体力勝負だけでは、ネット通販にも異業種にも勝ちにくくなったからです。昔の家電量販店は、メーカー品を大量に仕入れ、店頭で比較させ、値引きで買ってもらうモデルが強力でした。客も「テレビと洗濯機を見比べるなら量販店」と考えやすかった。

ところが今は違います。価格比較はスマホでできます。配送はネット通販が速い。しかも、ニトリ、ドン・キホーテ、ホームセンター、雑貨店まで、家電っぽい商品を自分のブランドで出してきます。トースターや扇風機や調理家電は、もはや「家電売り場だけのもの」ではありません。売り場の境界線が、体育館の白線くらい簡単に踏まれています。

そこで重要になるのがPBとSPAです。メーカー品を横に並べて値引きするだけなら、価格競争に巻き込まれます。けれど自社で企画した商品なら、デザイン、機能、価格、利益率を自分たちで組み立てられます。「この機能はいらないから安く」「この色なら部屋になじむ」「修理や配送までセットで安心」といった提案ができます。

大きさは目的ではなく材料

売上高2兆5000億円という数字は派手です。ただ、それ自体がゴールではありません。大きさは、共同仕入れ、物流、商品開発、データ分析を進めるための材料です。

たとえば仕入れでは、規模が大きいほどメーカーや部材調達先との交渉力が強くなります。物流では、倉庫や配送網を組み直せば、重くてかさばる家電の配送コストを下げやすくなります。家電は靴下のようにポストへ入れて終わり、とはいきません。冷蔵庫を玄関で「はいどうぞ」と渡されても、家庭内でただの白い壁になります。設置、回収、保証まで含めて勝負です。

商品開発でも、顧客データが効きます。どの地域でどんな家電が売れるのか。若い世帯は何を削り、何に払うのか。高齢世帯はどんな操作に困るのか。こうしたデータが多いほど、PB商品を外しにくくなります。家電量販店は、売るだけでなく「生活の困りごとを見ている場所」でもあります。その観察力を商品へ戻せるかが勝負です。

一方で、大きくなれば何でもうまくいくわけではありません。統合すれば、店舗の重複、システム統合、仕入れ先との関係、社内文化の違いが出ます。看板を2つ残すなら、どこまで統一し、どこを地域性として残すかも難しい。巨大化は魔法の杖ではなく、大きめの工具箱です。使い方を間違えると、ネジより先に自分の指を打ちます。

消費者には何が関係するのか

消費者にとっての関心は、安くなるのか、品ぞろえがよくなるのか、サポートはどうなるのかです。共同仕入れや物流効率化がうまくいけば、価格や配送の面で利点が出る可能性があります。PB商品が強くなれば、メーカー品より安い選択肢も増えるかもしれません。

ただし、注意点もあります。大手同士の統合で選択肢が減る地域では、競争が弱まり、価格が下がりにくくなる可能性もあります。店名が違っても、後ろの会社が同じなら、実質的な競争は薄くなります。消費者としては、統合後に「安くなった気がする」だけでなく、保証、修理、配送、ポイント、長期利用の使いやすさまで見る必要があります。

もう一つ大事なのは、PB家電の質です。PBは安さが魅力ですが、家電は長く使うものです。炊飯器なら毎日働く台所の社員、洗濯機なら家庭内の無言の重労働担当です。安いけれどすぐ壊れる、修理が弱い、部品が手に入りにくいとなれば、結局高くつきます。統合で本当に問われるのは、安いPBではなく、責任を持てるPBを作れるかです。

それで何が変わるのか

この統合は、家電量販店の未来をかなり正直に示しています。もう「広い売り場」「たくさんのメーカー品」「値引き交渉」だけでは足りません。生活家電は、インテリア、アプリ、住宅設備、リフォーム、修理、配送とつながっています。店は商品棚ではなく、暮らしの入口になる必要があります。

だから統合後に見るべきポイントは、店舗数ではありません。PB商品が増えるだけでなく、本当に買いやすく、直しやすく、使い続けやすい設計になっているか。物流が速くなるだけでなく、設置や回収の負担が減るか。地域店の相談力が、巨大グループの効率に飲み込まれず残るか。ここが本当の勝負です。

読者にとっては、家電を買う時の見方も変わります。メーカー名だけでなく、販売店ブランドの商品がどこまで責任を持って作られているかを見る。価格だけでなく、保証、部品、修理、設置、回収を含めて比べる。家電は買った瞬間より、壊れそうな瞬間に店の価値が出ます。レジでは笑顔でも、故障時に電話が迷路なら困ります。

まとめ

ヤマダHDとエディオンの統合は、売上高2兆5000億円の巨大チェーン誕生というニュースです。ただし本題は、大きさそのものではありません。家電量販店が、メーカー品の安売り中心から、自社で商品・物流・顧客データを組み合わせる商売へ移ろうとしていることです。

統合が成功するかは、店舗数の足し算では決まりません。PB商品を安さだけでなく品質とサポートまで含めて設計できるか。地域の相談力を残しながら、物流と仕入れを効率化できるか。家電売り場の未来は、赤い値札より、その後ろにある商品づくりの腕前で決まります。

Sources

  • TBS NEWS DIG「売上高“2兆5000億円”チェーン誕生なるか ヤマダHDとエディオンが経営統合に向け基本合意」
  • ヤマダホールディングス・エディオン「持株会社方式による経営統合に関する基本合意書の締結について」
  • ケータイ Watch「ヤマダHDとエディオン、経営統合を正式に発表」