裏金事件を「罰金60万円なら軽い話」と読むと、政治資金のいちばん大事な穴を見落とします。

判決後は政治活動へ含みも…自民党派閥パーティーの不記載巡る“裏金事件” 大野元参院議員に罰金60万円の有罪判決|FNNプライムオンライン
判決後は政治活動へ含みも…自民党派閥パーティーの不記載巡る“裏金事件” 大野元参院議員に罰金60万円の有罪判決|FNNプライムオンライン

自民党派閥の政治資金パーティーでの不記載をめぐる裏金事件。岐阜県選出の元参院議員・大野泰正被告に下されたのは、一部を無罪とした上で「罰金60万円の有罪判決」でした。午後1時、神妙な様子で記者会見に臨んだ元参院議員・大野泰正被告。大野泰正被告:「改めて国民の皆さまに今回の件で政治不信を招いたこと、心より深くおわび申し上げます」政界を揺らした自民党派閥をめぐる裏金事件は、ひとつの区切りを迎えました。岐阜県選出の自民党の参議院議員だった大野被告と、元秘書の岩田佳子被告。2人が問われたのは、旧安倍派か…

今回の登場人物

大野泰正元参院議員は、岐阜県選出の元参議院議員です。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる不記載事件で判決を受けました。

元秘書の岩田佳子被告は、大野氏側の収支報告書に関わった人物として報じられています。

政治資金収支報告書は、政治団体のお金の出入りを記録し、公開する書類です。政治資金の家計簿にあたります。

旧安倍派は、自民党内の派閥の一つです。今回の事件では、パーティー券販売ノルマ超過分の還流が問題になりました。

寄付金か預り金かは、今回の争点です。寄付なら収支報告書への記載が必要になりますが、預り金という認識なら大野氏側は記載不要と主張していました。

何が起きたか

FNNは6月24日、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる不記載事件で、大野泰正元参院議員に罰金60万円の有罪判決が言い渡されたと報じました。

報道によると、大野氏と元秘書は、旧安倍派から受け取った計約5100万円を政治資金収支報告書に記載しなかった政治資金規正法違反の罪に問われていました。焦点は、その約5100万円をどう認識していたかです。

検察側は、2人が寄付金と認識しながら記載しなかったなどとして、大野氏に罰金150万円、元秘書に罰金50万円を求刑しました。一方、大野氏側は、派閥から何の金か説明がなく、記載不要の預り金と認識していた、収支報告書の内容も把握していなかったとして無罪を主張していました。

判決では、受け取った現金は寄付にあたると認定されました。ただし、2021年までの4年分は2人の共謀が認められず罪の成立は認められないとされ、直近の2022年分のみ、共謀の上で収支報告書に虚偽記入をしたと認定されました。

ここが本題

本題は、罰金60万円という金額の印象ではありません。政治資金の世界で「これは何のお金か」を誰がどう認識し、どう記録する仕組みだったのかです。

政治資金の問題は、一般の家計よりずっと公共性が高いお金の話です。政治家や政治団体に入るお金は、誰から、何のために、いくら入ったのかが見える必要があります。そうでないと、有権者は政治家とお金の関係を判断できません。

今回の争点は、受け取った現金が寄付なのか、預り金なのかという点でした。言葉だけ見ると会計の細かい分類に見えます。でもここが大事です。ラベルが変わると、記録の義務や公開のされ方が変わります。冷蔵庫のプリンに「共有」と書くか「俺の」と書くかで家庭内の平和が変わるのと似ています。ただしこちらは国会級に重いプリンです。

「認識していなかった」はなぜ問題になるのか

大野氏側は、派閥から何の金か説明がなく、記載不要の預り金と認識していたと主張していました。さらに、収支報告書の内容も把握していなかったとしています。

ここで読者が考えるべきなのは、仮に政治家本人が細かい会計作業をすべて見ていなかったとしても、政治資金の透明性は誰が担保するのかという問題です。政治団体には会計責任者や秘書がいます。しかし、最終的に政治活動の信用を背負うのは政治家本人です。

「知らなかった」で済む範囲が広すぎると、政治資金の公開制度は弱くなります。逆に、本人にすべての事務ミスまで刑事責任を負わせるのも現実的ではありません。だから裁判では、認識、共謀、記録の実態が細かく問われます。

今回の判決で2021年までの4年分は共謀が認められず、2022年分のみ有罪とされた点は、まさにその難しさを示しています。全部が有罪でもなく、全部が無罪でもない。政治資金事件は、見出しのスカッと感より、事実認定の地味な段差が重要です。

罰金額だけでは制度の弱さは見えない

罰金60万円という数字を見て、「約5100万円が問題なのに60万円なのか」と感じる人もいるはずです。その違和感は自然です。ただし、刑罰の金額だけでニュース全体を評価すると、制度の本題を見落とします。

政治資金規正法は、政治資金を完全に禁止する法律ではありません。お金の流れを公開させ、有権者が監視できるようにする法律です。つまり、違反の核心は「受け取ったこと」そのものだけでなく、「記録しなかったこと」「見えなくしたこと」にあります。

見えないお金は、あとから検証しにくい。誰が、いつ、どの目的で、どれだけ動かしたのか。記録がなければ、国民は判断材料を失います。政治資金の透明性は、民主主義の防犯カメラみたいなものです。防犯カメラが壊れていたら、あとで「何も起きていません」と言われても、はいそうですかとはなりにくい。

だから今回のニュースで問われるのは、判決後の政治活動だけではありません。派閥、議員事務所、会計責任者、政治団体の記録体制が、同じ問題を繰り返さない形になっているかです。

それで何が変わるのか

有権者にとってのポイントは、政治資金事件を「誰が悪いか」で終わらせないことです。もちろん責任は重要です。しかし、制度の弱さを見なければ、次の事件も別の名前で起きます。

見るべき点は三つあります。第一に、政治資金収支報告書の記載ルールが分かりやすいか。第二に、派閥や政治団体から議員側へお金が動く時、名目や使途が書面で明確になるか。第三に、政治家本人が「知らなかった」と言える範囲をどこまで狭めるかです。

この三つが曖昧なままだと、政治資金の問題は個人の反省で終わり、仕組みはそのまま残ります。反省の言葉は必要ですが、会計の仕組みが変わらなければ、同じ棚からまた同じものが落ちてきます。棚を直さずに「次は気をつけます」だけでは、床がかわいそうです。

また、政治活動への復帰や今後の選挙を考えるなら、有権者は判決内容と説明責任をセットで見る必要があります。一部無罪となった点、有罪となった点、本人が何を把握していたのか、今後どう再発防止するのか。そこまで説明できるかが、政治家としての信用に関わります。

報道を読む側も、金額の大きさ、罰金額、謝罪コメントだけで判断しない方がいい。政治資金の問題は、民主主義の点検表です。項目が細かいからといって、読まなくてよいわけではありません。

今回の判決が示したもう一つのポイントは、裁判所が「お金の性質」と「共謀の有無」を分けて見ていることです。受け取った現金は寄付にあたるとしながら、すべての年について有罪とはしていません。つまり、政治資金事件では、違法な状態があったかだけでなく、その違法状態を誰がいつ認識し、誰と意思を合わせていたかが問われます。

これは有権者にとって分かりにくい部分です。けれど、ここを飛ばすと「結局軽い」「結局逃げた」という感情だけが残ります。感情は大事ですが、制度を直すには事実認定のどこで線が引かれたかを見る必要があります。政治資金の家計簿は、数字だけでなく、責任のサイン欄まで読まないと全体像が見えません。

まとめ

大野泰正元参院議員に罰金60万円の有罪判決が出ました。約5100万円をめぐる不記載のうち、判決は一部を無罪とし、2022年分のみ虚偽記入を認定しています。

本題は、罰金額の印象ではなく、政治資金が寄付なのか預り金なのか、誰がどう認識し、どう記録する仕組みだったのかです。政治資金の透明性は、有権者が政治を判断するための土台です。見えないお金を減らすには、謝罪だけでなく、記録と責任の仕組みを変える必要があります。

Sources