道の駅でトラブル、と聞くと、どこかローカルな揉め事に見えます。もちろん現場はかなりローカルです。でも、制度として見ると、これはわりと全国区の話です。

FNNプライムオンラインが4月6日に伝えたように、静岡県小山町の「道の駅すばしり」では、契約が終わった前の指定管理者が営業を続け、新しい指定管理者が入れない状態になっています。ここで本当に見るべき本題は、「前の会社がひどい」で終わることではありません。公共施設を民間に任せる指定管理者制度が、始め方に比べて終わらせ方をあまり丁寧に設計してこなかったことです。

契約終了後も“勝手に居座り”営業継続 道の駅の指定管理をめぐってトラブル
契約終了後も“勝手に居座り”営業継続 道の駅の指定管理をめぐってトラブル

静岡県小山町の道の駅すばしりで、契約が終わった前指定管理者が営業を続け、新指定管理者が入れない状態となっている。

今回の登場人物

  • 指定管理者制度: 自治体の公共施設を、条例と契約に基づいて民間事業者や団体が運営する仕組みです。効率化やサービス向上を狙います。
  • 道の駅すばしり: 静岡県小山町にある公共施設です。観光と地域経済の接点になっています。
  • 前指定管理者: 契約期間が終わった後も営業継続を主張している事業者です。
  • 新指定管理者: 4月から新たに運営するはずだった事業者です。現時点では実際の運営に入れていません。
  • 直営管理: 本来は民間へ任せるはずの施設を、自治体が一時的に自分で管理する形です。制度が詰まった時の応急処置になりがちです。

何が起きたか

FNNによると、小山町は4月1日以降、道の駅すばしりを新しい指定管理者へ切り替える予定でした。しかし前指定管理者が施設の明け渡しに応じず、営業を継続しているため、新指定管理者が入れない状態になっています。町は一時的に直営管理へ切り替えつつ、法的措置も視野に対応を検討しているとされています。

前指定管理者側は、原状回復工事や協議の継続を理由に、自らの対応に正当性があると主張しています。一方で、利用者から見れば、公共施設の運営主体がだれなのか、責任はどこにあるのかがかなり分かりにくい。観光客にとっては「ソフトクリームが買えるか」も大事ですが、行政としてはそこより前に、「この建物をいま誰が法的に支配しているのか」が問われています。

ここが本題

本題は、指定管理者制度が「選ぶところ」には熱心でも、「交代するところ」の設計が甘くなりやすいことです。

指定管理者制度は、公共施設を役所直営より柔軟に運営できるという期待で広がりました。たしかに、民間のノウハウや地域企業の企画力が生きる場面はあります。ただ、制度の説明は往々にして「どう選ぶか」「どう評価するか」に寄りがちで、「契約終了時に何をどこまで返すか」「引き継ぎ資料や備品の扱いをどうするか」「揉めたら誰がどの権限で止めるか」まで丁寧に見られにくい。

今回の件は、その出口の弱さが前に出た例です。始まり方がきれいでも、終わり方が設計されていない制度は、最後にだいたいもつれます。学園祭で出店を出す時は盛り上がるのに、片付け担当だけ決まっていない、あの嫌な感じです。制度は片付けが雑だと、だいたい本番より後で揉めます。

なぜ交代時に問題が起きやすいのか

第一に、公共施設には「箱」と「商売」が同居しているからです。建物は自治体のものでも、運営ノウハウ、仕入れ、人員配置、売上の見込み、顧客との関係は事業者側に蓄積します。だから契約終了時には、物理的な明け渡しだけでなく、事業の主導権も一緒に動かさないといけない。ここが難しい。

第二に、自治体は平時には民間任せを進めても、トラブル時の強制執行や訴訟には慣れていないことが多いからです。行政は制度の番人ですが、現場では交渉の当事者にもなります。その結果、「法的にはこうだが、今日の営業はどうする」が重なり、判断が遅れやすい。利用者にはそこが一番見えます。

第三に、指定管理者制度はコストや集客で評価されがちで、引き継ぎ品質が評価項目として軽いからです。売上が上がった、イベントが増えた、客足が伸びた。もちろん大事です。でも、交代の時に施設をきれいに返し、資料を引き渡し、次の運営へつなげることも公共サービスの一部です。ここを点数化しないと、制度は最後に荒れます。

第四に、観光施設や道の駅のような場所では、地域経済との結びつきが強く、運営主体の変更が単なる事務手続きで終わらないからです。地元業者との取引、テナントとの関係、雇用、イベント日程、観光シーズンの売上見込みまで絡みます。だから交代時に「契約は終わりました、明日から別会社です」と紙だけで切り替えるのは難しい。難しいからこそ、前倒しの段取りが要るのですが、そこが後回しになりやすいのです。

日本の読者にとっての意味

このニュースは一つの道の駅の特殊事例ではありますが、図面はかなり普遍的です。図書館、文化施設、スポーツ施設、公園、観光施設。日本中で指定管理者制度は使われています。だから今回の件は、「もし交代時に揉めたら、役所はどこまで備えているか」という全国の宿題にも見えます。

利用者目線では、公共施設は開いていて普通、閉まれば困る場所です。けれど制度側は、その「普通」を支える引き継ぎを軽く見がちです。今回の混乱が示したのは、公共施設の運営で大事なのは、派手な企画だけではなく、明け渡し、責任分界、緊急時の権限移行みたいな地味な部分だということです。地味です。でも、地味な所が壊れると、だいたい全部止まります。

自治体にとって今後の論点は明確です。公募要項や協定書の中で、契約終了時の原状回復、備品・鍵・データの引き渡し、未解決協議があっても営業権限はどう移るのか、第三者立ち会いを入れるのか、といった出口の条項をどこまで具体化できるか。ここが曖昧なままだと、次も同じ形のもつれが起きます。

利用者は「ちゃんと開いていればそれでいい」と思いがちですが、公共施設では「誰が責任者か」が曖昧な状態で開いているのが一番危ういです。事故、金銭トラブル、衛生問題が起きた時に、責任の線がぼやけるからです。今回の件は、営業しているかどうかより、責任が誰にあるかを制度が即答できるかが重要だと教えています。

しかも道の駅は、休憩所であり、観光案内所であり、地域の物販拠点でもあります。単なる店舗トラブルなら民間同士の話で済む部分も、公共施設だと行政の信用にそのまま跳ね返ります。「町の施設なのに、なぜ誰も整理できないのか」と見られるからです。今回の件が重いのは、売上の問題より、行政が制度の出口を握れているかが丸見えになった点にあります。

制度は、平時にきれいでも、交代時に止まるなら半分壊れています。今回の件は、その厳しい当たり前を地方行政に突きつけています。

まとめ

道の駅すばしりの問題は、前指定管理者の居座りという一件だけで読むと、ただの揉め事に見えます。けれど本質は、指定管理者制度が交代時の出口設計を十分に詰めてこなかったことにあります。

公共施設を民間に任せる制度は、始める時より終える時のほうが難しい。今回のニュースは、その当たり前をかなり痛い形で見せました。指定管理者制度を本当に持続可能にしたいなら、選定の華やかさだけでなく、引き継ぎの泥くささまで制度の中に書き込まないといけません。

Sources