部活の脳しんとうというと、つい「ラグビーが危ない」「武道は気をつけよう」で理解したくなります。もちろん、それも大事です。ただ今回のニュースでいちばん大きい引っかかりは、競技名より学年でした。中学でも高校でも、発生件数が最も多かったのが2年生。ここ、かなり本題です。
2026年4月12日午前8時30分公開の毎日新聞は、日本スポーツ振興センターや筑波大などのチームによる調査研究として、2012年4月から2020年3月までの災害共済給付制度データを分析した結果、部活動中のスポーツ関連脳しんとうは中高とも2年生が最多だったと伝えました。今回の中心問いは、なぜこのニュースは「危険な競技の一覧」より、「どの学年のどの場面で事故が起きやすいか」を見直す話として読むべきなのか、です。

中学や高校の部活動で脳しんとうが多発するのは「2年生」――。そんな調査研究の結果を日本スポーツ振興センターや筑波大などのチームがまとめた。試合だけでなく、練習中でも多く発生していたという。
今回の登場人物
- 脳しんとう: 頭を打ったあとに起きる脳の機能障害です。見た目で分かりにくく、頭痛、めまい、吐き気、集中しづらさなどが出ることがあります。
- 災害共済給付制度: 学校管理下で起きたけがなどに対して給付を行う仕組みです。学校現場の事故を広く捉えるデータの土台にもなります。
- コンタクトスポーツ: ラグビーや柔道のように、相手との接触が多い競技です。脳しんとうの起こりやすさに強く関係します。
- 非コンタクトスポーツ: 相手との接触が少ない競技です。それでも練習中の転倒や衝突などで脳しんとうは起こります。
- CTE: 慢性外傷性脳症のことです。繰り返す頭部衝撃との関連が指摘されており、だからこそ「1回くらい大丈夫でしょ」を軽く見ないほうがいいとされます。
何が起きたか
毎日新聞によると、部員数が把握できた24競技でスポーツ関連脳しんとうは1万1660件あり、男子が84%を占めました。学年別では中学1955件、高校3138件で、どちらも2年生が最多。競技別の部員1000人当たり発生割合はラグビーが8.1件で突出し、柔道1.95件、空手1.49件、サッカー1.03件などが続きました。
ここで「やっぱり接触の多い競技は危ないですね」で記事を閉じると、半分しか読めていません。実際、試合中が5696件で49%と最も多い一方、練習中も5165件で44%ありました。しかも非コンタクトスポーツでは練習中が63%。つまり、危険は大会の派手な場面だけに住んでいないんです。学校のいつもの時間割の中に、かなり普通の顔で紛れています。
ここが本題
今回の本題は、「どの競技が危ないか」だけでは安全対策が足りず、「どの学年の、どの場面に、どんな負荷が集まるか」を見ないと設計を外す、という点です。
2年生が最多という結果は、かなり示唆的です。中高の部活では、1年生はまだ競技経験も身体接触の強度も比較的控えめなことが多い。一方で2年生になると、練習の強度が上がり、試合にも絡み、ポジションの責任も増えます。それでいて3年生のように引退が近くて活動量が落ちるわけでもない。研究代表者も、競技経験の蓄積やプレー強度の変化、3年生での活動量低下などが背景として考えられるとしつつ、直接検証はしていないと説明しています。
ここが大事で、原因はまだ断定できません。けれど、対策の置き場所として2年生が濃く見えてきたのは事実です。安全教育を「新入生向けの最初の説明」で終わらせる設計だと、ちょうど危険が厚くなる時期とズレる可能性がある。学校側はこのズレをかなり真面目に見たほうがよさそうです。
危険競技ランキングだけでは足りない理由
ラグビーや柔道で発生割合が高いのは重要な情報です。ただ、ランキングだけを見ていると、対策が「その競技だけ厳しくすればいい」に寄りがちです。でも今回のデータは、接触の少ない競技でも練習中の事故が無視できないことを示しています。
つまり、安全対策は二段構えで考える必要があります。ひとつは競技特性に応じた対策。もうひとつは、学年や練習設計に応じた対策です。前者だけだと、「うちはラグビー部じゃないから大丈夫」と油断しやすい。後者まで入れると、「2年生でメニューが急に重くなっていないか」「練習中の頭部接触や転倒の見逃しがないか」という、学校全体の見直しに変わります。
要するに、危険競技ランキングは入口であって、出口ではありません。地図でいえば赤い場所を知る段階まで。実際に事故を減らすには、そこで誰が何をしている時間なのかまで見ないといけないわけです。
誤解しやすいところ
ひとつ目は、「2年生が危ないと証明された」と言い切ることです。今回の研究は全国データを使った重要な分析ですが、なぜ2年生で多いのかを直接検証したわけではありません。ここは断定しないほうがいいです。
ふたつ目は、「試合を減らせばいい」という短絡です。実際には練習中も44%を占めています。非コンタクト競技では練習中の比率がむしろ高いので、日常の練習設計を見直さないと片手落ちになります。
三つ目は、「見た目が普通なら軽い」と考えることです。脳しんとうは外見から判断しにくいのが厄介なところで、集中力低下や頭痛が学業や生活にも影響します。部活のけがで終わらず、授業にまで持ち込む可能性がある。ここを軽く見ると、対応が遅れます。
日本の読者にとっての意味
このニュースが日本の読者に重要なのは、学校安全を「根性の問題」ではなく「設計の問題」として見直せるからです。部活事故の議論は、ともすると指導者の気合い論や個別の不運に流れがちです。でも全国データが学年差や場面差を示したなら、そこに合わせて安全教育、観察、報告、受診の動線を厚くするのが筋です。
特に2年生は、部の中心になり始める学年です。うまくなって、任されて、強度も責任も増える。言い換えると、いちばん「頑張るのが普通」に見えやすい時期でもあります。だからこそ、無理のサインを本人も周囲も見落としやすい。今回の結果は、そこへ小さくない警報を出しています。
部活をやめろという話ではありません。むしろ逆で、続けるなら続けるで、危険が厚くなるタイミングに合わせて守り方も変えよう、という話です。スポーツの安全って、気合いの前に設計なんですよね。ここを雑にすると、頑張り屋ほど損をします。
それで何が変わるのか
学校現場で実際に変えるべきなのは、啓発の置き場所です。新入生向けの最初の説明だけで終わらせず、2年生へ上がる時期に改めて脳しんとうのサイン、練習中でも止まる基準、受診や復帰の流れを確認する。ここを年1回の紙配布で済ませるか、学年の節目で繰り返すかでだいぶ違います。
保護者や生徒にとっても、「試合で倒れなければ大丈夫」という感覚は見直したほうがいいです。練習後の頭痛、集中しづらさ、ぼんやり感が続くなら、それは気合い不足ではなく受診サインかもしれない。今回の調査は、部活の安全を競技名だけで語る段階から、学年と場面まで含めて考える段階へ進め、と言っているように見えます。
まとめ
部活動中の脳しんとうのニュースで本当に見るべきなのは、危険競技ランキングだけではありません。中高とも発生件数が最多だった2年生という結果が示すのは、事故対策を競技だけでなく学年と場面で設計し直す必要です。
試合中だけでなく練習中にも多く、非コンタクト競技でも起きる。しかも見た目では分かりにくい。だから今回のニュースは、「どのスポーツが荒いか」を眺める話ではなく、「学校はどこで見張りを厚くするべきか」を考える材料として読むのがいちばん筋が通っています。