出生率を「若者が産まない」で片づけると、かなり雑です。本題は、子どもを持つ判断の前に、毎日の生活を支える地図が足りているかです。

2025年の北海道の合計特殊出生率が、統計開始以来の過去最低を更新しました。全国と比較しても、東京に次いでワースト2位という記録に。 この数字に、札幌市民の反応は――。【札幌在住・30代・娘(小1)】 「子育てしながら働くのは大変。小学校1年生になったが、預かってくれる所がもうちょっとあると働きやすい」 「(Q:どんな環境であれば2人目を考えるか)助けてくれる人が周りにいっぱいいたら良い」 「(親族は)離れて住んでいるので助けてもらいにくい。もう今は大きくなったが、小さい時は出かけるのも大変。…
今回の登場人物
合計特殊出生率は、1人の女性が一生に産む子どもの数に近い形で示す統計指標です。ざっくり言うと、地域や国の出生傾向を見るためのものです。
北海道は、今回の主役です。FNNは、2025年の北海道の合計特殊出生率が統計開始以来の過去最低を更新し、全国では東京に次ぐワースト2位だったと報じています。
預け先は、保育所、学童、病児保育、放課後の居場所などを含む生活インフラです。子育てと仕事を同時に回すうえで、家庭の気合いより現実的な助けになります。
若者流出は、地方の少子化を考えるうえで重要な背景です。FNNの記事では、北海道から若い子がいなくなっている印象がある、という10代の声も紹介されています。
親族の近さは、子育ての実感を左右します。祖父母や親族が近くにいるかどうかで、急な発熱、送迎、親の休息の難易度が変わります。
何が起きたか
FNNプライムオンラインは2026年6月14日、2025年の北海道の合計特殊出生率が統計開始以来の過去最低を更新し、全国と比較しても東京に次ぐワースト2位になったと報じました。
記事では、札幌市民などの声が紹介されています。小学校1年生の娘を育てる30代の人は、子育てしながら働くのは大変で、預かってくれる所がもう少しあると働きやすい、助けてくれる人が周りにいっぱいいたらよい、という趣旨を話しています。親族が離れて住んでいて助けてもらいにくいとも語っています。
また、10代の美容専門学校生は、道外で就職したい子が多く、北海道から若い子がいなくなっている印象がある、東京の方が魅力的で暮らしてみたい願望がある、と話しています。
ここが本題
今回の本題は、出生率の数字そのものではありません。子どもを持つかどうかの前に、育てながら働き、暮らし続けるための支えが地域に見えているかです。
少子化の話になると、すぐに「結婚しない」「産まない」という個人の気持ちに話が寄りがちです。もちろん個人の価値観は大切です。でも、出生率は気持ちだけで決まりません。住む場所、仕事、収入、保育、学校、親族、通勤、医療、地域の雰囲気。生活の部品がそろって初めて、子どもを持つ選択が現実になります。
たとえば、夕方まで仕事をして、子どもを迎えに行き、急な発熱に対応し、翌日の仕事も休めない。ここで「気合いで何とかして」と言われても、気合いは保育士資格を持っていません。気合いにお迎えを頼んでも、たぶん玄関で迷子です。
深掘り前半
FNNの記事で目立つのは、「預け先」と「近くの助け」の話です。子育ては、子どもがかわいいかどうかだけでは回りません。かわいい。もちろんかわいい。でも、かわいいだけで発熱は予約制にならないし、学童の閉所時間も延びません。
小学校入学後は、保育園時代とは別の難しさがあります。いわゆる「小1の壁」です。授業が終わる時間は早く、長期休みもあります。学童に入れるか、時間が合うか、送迎できるか。親の働き方と学校の時間割がずれると、毎日がパズルになります。しかもピースが湿っていて、なかなかはまらないタイプのパズルです。
親族が近くにいないことも大きいです。祖父母に頼れる家庭と頼れない家庭では、同じ制度でも体感が変わります。急な残業、子どもの体調不良、きょうだいの行事が重なった日。近くに頼れる大人がいると、家庭は少し息をできます。いない場合は、親が仕事と育児を一人で抱え込みやすくなります。
少子化対策では、お祝い金や給付金が注目されます。お金は大事です。家計に余裕がなければ、子どもを持つ判断は難しくなります。ただ、お金だけでは毎日の穴は埋まりません。夜に熱を出した子を見てくれる人、放課後に安全に過ごせる場所、親が休める仕組み。現物の支えがなければ、給付金はありがたいけれど、生活の詰まりは残ります。
深掘り後半
もう一つの本題は、若者が地域に残る理由です。FNNの記事では、10代の学生が、道外で就職したい子が多い、東京の方が魅力的だと話しています。これは「若者が都会にあこがれるから」で済ませるにはもったいない声です。
人は、仕事、学び、人間関係、文化、交通、遊び、将来の選択肢を見て住む場所を選びます。北海道には自然、食、住環境、観光資源など多くの魅力があります。一方で、若い人が「ここで働きたい」「ここで子育てしても詰まない」と思える職場や支援が見えにくければ、人口は外へ流れます。
出生率は、子育て世代だけの問題ではありません。若い人が進学や就職で地域を離れ、戻る理由が弱くなれば、そもそも子どもを持つ可能性のある世代が減ります。すると地域の学校、店、医療、交通も細り、さらに住みにくくなる。この循環は、静かに進むので怖いです。ニュース速報の音は鳴りません。気づくとバスの本数と同級生の数が減っています。
だから、少子化対策は「産んでください」とお願いする政策ではなく、「ここで暮らしても大丈夫」と見えるようにする政策です。保育、学童、住宅、雇用、移住、交通、医療、教育を分けて考えるのではなく、生活の一枚の地図としてつなげる必要があります。
それで何が変わるのか
日本の読者にとって、北海道の出生率は他人事ではありません。少子化は全国の課題で、地域ごとに理由の組み合わせが違います。東京は住居費や保育、通勤の問題が大きい。地方は若者流出、仕事の選択肢、交通、親族との距離、支援拠点の少なさが重なります。
同じ「出生率低下」でも、処方箋は一つではありません。北海道で見るべきは、広い地域にどう支援を届けるかです。都市部の札幌と、人口の少ない地域では課題が違います。保育所を増やすだけでは足りない場所もあります。送迎、オンライン相談、病児保育、放課後の居場所、若者の仕事づくりなどを組み合わせる必要があります。
また、子どもを持たない選択を責める方向に行ってはいけません。少子化対策の目的は、個人に圧をかけることではなく、望む人が子どもを持てない障害を減らすことです。ここを間違えると、政策は応援ではなく説教になります。説教で出生率が上がるなら、校長先生の長話で人口爆増しているはずです。現実はそうではありません。
今後見るべきは、出生率の順位だけではありません。放課後の預け先が増えるか、病児保育や一時預かりが使いやすくなるか、若者が道内で働き続ける職場があるか、親族が近くにいない家庭を支える仕組みがあるかです。数字の裏にある生活の詰まりを見ないと、少子化対策はポスターで終わります。
さらに、支援は「ある」だけでなく「使える」ことが大事です。申し込みが複雑すぎる、場所が遠い、時間が合わない、職場で休みにくい。こうした小さな詰まりが重なると、制度は存在していても生活には届きません。
まとめ
FNNは、2025年の北海道の合計特殊出生率が統計開始以来の過去最低を更新し、全国では東京に次ぐワースト2位だったと報じました。記事では、預け先の不足、親族に頼りにくい状況、若者の道外志向を示す声が紹介されています。
本題は、出生率を見て若者や親を責めることではありません。子どもを持ちたい人が、働きながら育てられる生活の支えを地域に持てるかです。お祝い金だけでなく、預け先、近くの助け、仕事、若者が残る理由を一枚の地図として整えることが問われています。
Sources
- FNNプライムオンライン「【全国ワースト2位】北海道の“合計特殊出生率”が過去最低を更新」2026年6月14日