募金の不正を「ひどい人がいた」で終わらせると、次の善意も守れません。本当に見るべきは、1人でお金を抱え込める仕組みがなぜ残ったのかです。

北海道共同募金会で約1億8000万円の使途不明金が判明し、事務局長による長年の着服の可能性が浮上した。寄付金は1人で管理されていて発覚が遅れたとみられ、刑事告訴も検討されている。人々の善意のもとに集められる「赤い羽根共同募金」。北海道共同募金会で、1億8000万円もの金額が使途不明になっていることが分かった。北海道共同募金会は午後2時から会見を行い、経緯を説明した。北海道共同募金会・瀬尾英生会長:職員による横領が疑われる事案が発生しました。現時点では今年度の資金が約1億8000万円不足している…
今回の登場人物
赤い羽根共同募金は、地域の福祉活動などを支えるために行われる募金です。学校や街頭、自治会などで見かける人も多い、かなり身近な寄付の仕組みです。
北海道共同募金会は、今回FNNが報じた使途不明金の舞台です。北海道で共同募金を扱う組織で、寄付金の管理と配分に責任があります。
事務局長は、報道で着服の可能性が指摘されている人物です。FNNは、寄付金が会計責任者である男性事務局長1人で管理されていたと伝えています。
ガバナンスは、組織を正しく動かすためのルールと監視の仕組みです。むずかしく聞こえますが、ざっくり言えば「お金や権限を一人ぼっちにしない工夫」です。
刑事告訴は、犯罪の疑いについて捜査機関に処罰を求める手続きです。FNNは、北海道共同募金会が刑事告訴も検討していると報じています。
何が起きたか
FNNプライムオンラインは2026年6月16日、北海道共同募金会で約1億8000万円の使途不明金が判明し、事務局長による長年の着服の可能性が浮上したと報じました。記事によると、寄付金は会計責任者である男性事務局長が1人で管理していて、発覚が遅れたとみられています。
北海道共同募金会の会長は会見で、職員による横領が疑われる事案が発生し、現時点では今年度の資金が約1億8000万円不足しているという計算になっている、と説明しました。FNNは、問題発覚の契機が2026年2月の国税局による強制調査だったとも伝えています。
その後、募金会が資料を精査する中で、3月末にあるべき金銭が不足している可能性が判明しました。刑事告訴も検討されていると報じられています。
ここが本題
今回の本題は、「寄付先を信じていいのか」という不安だけではありません。善意で集まったお金ほど、信頼に頼りすぎない管理が必要だということです。
寄付金は、普通の商品代金と少し違います。払う人は、すぐに見返りを受け取りません。「誰かの助けになりますように」と預けるお金です。だからこそ、扱う側には強い責任があります。募金箱に入った100円も、通帳に集まった1億円も、根っこは同じです。誰かが「役に立てて」と差し出した気持ちです。
ここで大切なのは、人を疑えという話ではありません。むしろ逆です。人を守るためにも、仕組みが必要です。1人だけが長くお金を管理できる状態は、その人を誘惑に近づけ、周りの人を発見から遠ざけます。冷蔵庫にプリンが一個だけあって、家族全員が「誰も食べないはず」と信じている状態です。もちろん食べない人もいます。でも名前を書いて、数を確認して、みんなで見える場所に置く方が家庭平和には効きます。
深掘り前半
FNNが報じた重要な点は、寄付金が会計責任者である事務局長1人で管理されていたという部分です。組織のお金の管理では、ここが大きな赤信号になります。お金を受け取る人、記録する人、承認する人、照合する人が分かれていれば、不自然な動きに気づきやすくなります。逆に、全部が1人に集中すると、ミスも不正も見えにくくなります。
これは大企業だけの話ではありません。部活の会計でも、文化祭の売上でも、町内会の集金でも同じです。お金を預かるなら、領収書、通帳、残高、使い道を複数の目で確認する。地味ですが、これが信頼の土台です。金庫に鍵をかけるだけでは足りません。鍵を誰が持ち、いつ開け、何を出し入れしたかを残す必要があります。
今回の報道では、国税局の強制調査が問題発覚の契機になったとされています。つまり、組織内の通常点検だけで早期に見つけられたとは言いにくい状況です。ここも重い点です。内部で気づけなかった期間が長いほど、被害額は膨らみ、寄付した人の信頼は削られます。
さらに、寄付団体は「人の善意で成り立つ」ため、信頼の傷が大きくなります。一度「本当に届くの?」と思われると、次に困っている人へ届くはずのお金まで減ってしまうかもしれません。不正の被害者は、目の前の会計だけではありません。将来支援を受けるはずだった人まで巻き込みます。
深掘り後半
では、どうすればよかったのでしょうか。基本はとても地味です。まず、1人に任せきりにしないこと。次に、定期的に外部または独立した立場の人が確認すること。さらに、入金と出金の流れを記録し、会議体に報告し、疑問があればすぐ止められる状態にすることです。
これは「犯人探し」より先にある話です。もちろん、実際に横領があったのか、誰が何をしたのかは、今後の調査や捜査で確認されるべきです。未確認の段階で個人の罪を断定してはいけません。ただ、報道されている範囲でも、1人管理で発覚が遅れたとみられる点は、仕組みの問題として考えられます。
寄付団体には、善意に甘えない説明責任もあります。どれだけ集まり、何に使われ、残高はいくらか。寄付した人が細かい会計資料まで毎日読むわけではありません。それでも、必要なときに確認できる透明性があるだけで、信頼はかなり違います。レストランの厨房を客席から全部見せる必要はありませんが、衛生検査を受けていること、何かあれば説明できることは大事です。
また、組織の空気も重要です。「長年やっている人だから大丈夫」「あの人に聞くのは失礼」となると、確認そのものが悪者になります。しかし、お金の確認は失礼ではありません。むしろ、預かる人を守るための安全帯です。高い場所で作業する人に命綱をつけるのと同じで、「あなたを疑っている」ではなく「事故が起きないようにする」です。
小さな団体ほど、ここで遠慮が出ます。人数が少なく、顔見知りで、長年同じ人が担当していると、確認を増やすだけで角が立つように感じるからです。でも、寄付金は個人の財布ではなく公共性のあるお金です。仲の良さと会計の厳しさは、同じ部屋に置けます。むしろ置かないと、善意が一番弱い場所から漏れていきます。
それで何が変わるのか
日本の読者にとって、このニュースは北海道だけの話ではありません。寄付、自治会費、学校の積立金、NPO、地域イベント。私たちは意外と多くの場面で「誰かにお金を預ける」社会にいます。そのたびに、信頼だけで回すのか、信頼を支える仕組みまで持つのかが問われます。
特に寄付文化を育てたいなら、不正が起きたときに「もう寄付なんてしない」で終わらせるのはもったいない。必要なのは、寄付そのものを冷笑することではなく、寄付金が届く道を太く、明るく、曲がり角の少ないものにすることです。善意はふわふわしていますが、管理はカチカチでいい。その組み合わせが一番強いです。
今後見るべきは、刑事告訴の有無だけではありません。北海道共同募金会がどの範囲まで調査を公表するのか、再発防止策をどう設計するのか、他地域の募金団体が同じような1人管理を点検するのかです。1つの不正疑惑を、全国の寄付管理を見直すきっかけにできるか。そこが大切です。
まとめ
FNNは2026年6月16日、北海道共同募金会で約1億8000万円の使途不明金が判明し、事務局長による長年の着服の可能性が浮上したと報じました。寄付金は1人で管理され、発覚が遅れたとみられています。
本題は、善意を疑うことではありません。善意で集まったお金だからこそ、1人に任せきりにせず、複数の目、記録、外部確認で守る必要があります。信頼は「信じる気持ち」だけでなく、「信じられる仕組み」でできています。
Sources
- FNNプライムオンライン「『赤い羽根募金』で1億8000万円の使途不明金 北海道共同募金会の事務局長が『着服』か…刑事告訴も検討」2026年6月16日