東京のマンション価格を「平均で1億円超え」とだけ見ると、自分の住まいの問題を読み違えます。

東京23区の中古マンション価格が5カ月連続で1億2000万円を上回りました。不動産調査会社の東京カンテイによりますと、5月に販売された東京23区の中古マンションの70平方メートルあたり平均価格は、2025年の同じ月と比べて27.4%上昇し、1億2849万円となりました。1億2000万円を上回るのは5カ月連続で、過去最高を更新しました。
今回の登場人物
東京23区の中古マンションは、今回の価格上昇が報じられた住宅市場です。新築ではなく中古、対象は23区です。
東京カンテイは、不動産の価格や市場動向を調べる会社です。FNNは同社の調査として今回の数字を伝えています。
70平方メートルあたり平均価格は、広さをそろえて比べるための指標です。実際に売られている全物件が70平方メートルという意味ではありません。
1億2849万円は、2026年5月に販売された東京23区中古マンションの70平方メートルあたり平均価格として報じられた数字です。
平均価格は便利ですが、すべての人の実感を代表するとは限りません。高額物件の影響も受けます。
何が起きたか
FNNは6月24日、不動産調査会社の東京カンテイによるデータとして、5月に販売された東京23区の中古マンション70平方メートルあたり平均価格が、前年同月比27.4%上昇し、1億2849万円になったと報じました。
東京23区の中古マンション価格が1億2000万円を上回るのは5カ月連続で、過去最高を更新したとされています。数字だけ見ると、かなり強烈です。1億円台という響きは、住宅情報というよりクイズ番組の最終問題みたいな圧があります。
ただし、このニュースを「東京の普通の中古マンションは全部1億2849万円」と読むと、話が雑になります。これは70平方メートルあたりの平均価格です。場所、築年数、駅距離、管理状態、階数、眺望、物件の価格帯によって、実際の選択肢は大きく変わります。
だから本当に見るべきなのは、価格が高いという驚きだけではありません。平均価格という数字が、どの市場の熱を映していて、どの生活者の実感をこぼしているのかです。
ここが本題
本題は、1億2849万円という数字を「東京で家を買う人全員の現実」として受け取らず、住宅市場のフィルターとして読むことです。
平均価格は便利です。市場全体が上がっているのか下がっているのかを見るには役立ちます。しかし、平均は高い物件に引っ張られます。高額な都心物件が多く売れれば、平均は上がります。逆に、安い物件が少なくなっても平均は上がります。
つまり平均価格の上昇は、単に「同じ家が急に高くなった」だけとは限りません。売れている物件の顔ぶれが変わった可能性もあります。クラスの平均点が上がったからといって、全員が急に賢くなったとは限らないのと同じです。転校してきた全国模試1位が平均を持ち上げているかもしれません。
住宅ニュースで大切なのは、このフィルターを外さないことです。
価格上昇は「買える人だけの市場」を強くする
マンション価格が上がると、まず困るのはこれから買いたい人です。頭金、住宅ローン、管理費、修繕積立金、固定資産税。住宅は本体価格だけで終わりません。買った後も毎月の支払いが続きます。
金利が上がれば、同じ借入額でも返済負担は増えます。物件価格が上がり、金利も高くなると、家計は二重にきつくなります。財布の両側から引っぱられる感じです。財布は伸縮素材ではありません。
その結果、買える人と買えない人の差が広がります。高所得者、資産を持つ人、親から支援を受けられる人、投資目的で買える人は市場に残りやすい。一方で、共働きでも子育て費や教育費を考える世帯は、23区内の購入から押し出されやすくなります。
この「押し出し」は、単に住所が変わるだけではありません。通勤時間、保育園、学校、親の介護、地域のつながりまで変わります。住宅価格は、不動産欄の数字に見えて、生活設計の骨組みに刺さります。
中古が高いということは逃げ場が狭い
新築マンションが高いのは、土地代、建築費、人件費、資材価格などの影響で説明されることが多いです。では中古なら手が届くのか。今回のニュースは、その逃げ場も狭くなっていることを示します。
中古マンションは、すでに建っているため新築より割安という期待があります。しかし都心部では、立地の価値が強く、築年数が進んでも価格が落ちにくい物件があります。さらに新築が高くなると、中古へ需要が流れ、中古価格も押し上げられます。
ここで起きるのは、住宅すごろくのマスが遠くなる現象です。新築は高い。中古も高い。賃貸も上がる。郊外へ出ると通勤時間が増える。どのマスに進んでも「一回休み」みたいな負担が置いてあります。
もちろん、東京23区全体が同じ動きではありません。エリア差は大きく、駅距離や築年数でも変わります。だから平均価格だけで個別判断はできません。ただし、平均が5カ月連続で1億2000万円を超えたという事実は、23区の住宅取得がかなり高いハードルになっていることを示す強いサインです。
それで何が変わるのか
読者にとって大事なのは、このニュースを「自分には関係ない富裕層の話」と切り捨てないことです。購入価格が上がると、賃貸市場にも影響が出ます。買えない人が賃貸に残れば、賃貸需要は強くなります。投資用物件の価格が上がれば、家賃で回収しようとする圧力も出ます。
企業にとっても無関係ではありません。都心で働く人が住みにくくなれば、通勤圏、採用、転勤、リモートワークの制度に影響します。若い世代が「東京で働くけど東京には住めない」と感じれば、都市の労働力の集まり方も変わります。
自治体にとっては、子育て世帯や中間層が流出する問題になります。高価格帯の住宅が増え、買える層が限られると、地域の年齢構成や学校、商店街、医療・介護の需要も変わります。マンション価格は、街の未来の住民票を先取りしているようなものです。
住宅を探す人は、平均価格に心を折られすぎないことも大切です。平均は地図の縮尺であって、あなたの部屋の間取り図ではありません。見るべきは、希望エリアの中央値、築年数別、駅距離別、管理費込みの総負担、将来売る可能性、家族構成の変化です。
同時に、政策としては住宅供給、空き家活用、賃貸支援、子育て世帯の住まい、通勤交通の整備がつながってきます。価格高騰を個人の努力だけで受け止めるには限界があります。1億2849万円という数字は、個人の貯金箱をのぞくだけでなく、都市政策の引き出しも開けるべき数字です。
もう一つ見たいのは、「広さをそろえた価格」と「実際の購入総額」の違いです。70平方メートルあたり平均価格は比較しやすい指標ですが、単身者向けの小さな部屋、家族向けの広い部屋、リノベーション前提の古い部屋では、家計への重さが変わります。管理費や修繕積立金も物件ごとに違います。価格ニュースは入口として便利ですが、住む人にとっては月々いくら払い、何年住み、将来どれだけ修繕が必要かまでが現実です。
そして、住宅価格が高い街では「買えないなら借りればいい」も簡単ではありません。購入希望者が賃貸に残り、投資用物件の利回りが意識され、家賃も上がりやすくなるからです。買う人のニュースは、借りる人のニュースでもあります。住宅市場は、となりの部屋の足音くらい意外と響きます。
まとめ
東京23区の中古マンション70平方メートルあたり平均価格が1億2849万円となり、過去最高を更新しました。これは強いニュースですが、「普通の家が全部その値段」と読むのは違います。平均価格は市場の熱を示す一方、高額物件や売れている物件の顔ぶれにも影響されます。
本題は、住宅市場が買える人だけに寄っていくと、購入希望者だけでなく賃貸、通勤、子育て、都市の人の流れまで変わることです。平均価格はただの数字ではありません。誰が街に住めるのかを映す、かなり重いフィルターです。