ドメイン登録で本人確認が必要になる。そう聞くと、「じゃあロシアはネット全部実名制にするのか」と一気に話を大きくしたくなります。でも今回のニュースは、そこまで雑に広げるとむしろ見えなくなります。本題はロシアのネット全体が一夜で実名化することではなく、.ru.рф.su という国別ドメインの登録や更新を、政府の本人確認基盤と結びつけることです。

しかも、未確認ならその日に全部没収、という話でもありません。確認できないと新規登録や更新、管理者変更などができず、現在の登録期間が切れたあとに失効へ近づく。制度の影響は、日付が変わった瞬間の一斉削除ではなく、次の管理操作や更新期限で表れます。

ロシアの「.ru」ドメインが実質使えなくなりそう? 本人確認義務化でユーザー悲鳴、関連事業者は対応急ぐ
ロシアの「.ru」ドメインが実質使えなくなりそう? 本人確認義務化でユーザー悲鳴、関連事業者は対応急ぐ

ロシア政府が「.ru」ドメインなどの管理者に本人確認を義務付ける方針を示し、同ドメインに関連する事業者が対応を迫られている。SNSでは、対象のドメインを使うユーザーから不安の声も出ている。

今回の登場人物

  • .ru / .рф / .su: ロシア関連のドメインゾーンです。.ru は一般的なロシア向け、.рф はキリル文字版、.su は旧ソ連由来のゾーンとして残っています。
  • 569-FZ: 2025年12月29日付のロシア連邦法です。一部規定は2026年9月1日に発効します。
  • ESIA: ロシアの統一認証基盤です。行政手続きの本人確認に使う仕組みで、だいたい「政府の共通ログイン」と考えると分かりやすいです。
  • Gosuslugi: ESIAを使うロシアの行政ポータルです。各種手続きの入口で、本人確認の窓口になります。
  • Trusted Administrator: REG.RUが非居住者向けに案内する、現地の管理者を介して要件に対応するサービスです。利用者の指示に基づいて操作する仕組みだと説明されています。

何が起きたか

ITmedia NEWSは7月31日、ロシアの国別ドメイン管理に新しい本人確認要件が入ることを報じました。

法的な根拠は連邦法569-FZです。ロシア政府系紙に掲載された法文では、条文の一部が2026年9月1日に施行されるとされています。ロシアのドメイン管理機関TCIも、9月1日から .ru.рф.su の管理者に対し、Gosuslugi、つまりESIA経由の本人確認が義務になると案内しています。登録や既存ドメインの更新は、確認後でなければできないとされています。

ここで気をつけたいのは、「未確認なら即日ドメイン没収」とまでは読めないことです。TCIの説明やレジストラREG.RUの案内から見ると、主に問題になるのは登録、更新、名義管理などの手続きです。確認できなければ更新できず、結果として期限切れや失効のリスクが高まる、という理解が自然です。

ここが本題

中心問いへの答えを言うと、国別ドメインの管理に国家本人確認が入ると何が変わるか。それは、ドメインの登録や更新と、確認済みの管理者情報が制度上はっきり結びつくことです。

ドメインは表向きただの住所みたいに見えますが、実際には登録者、更新期限、移管先、DNS設定といった管理情報を伴います。新制度では、その重要な操作の前提にESIAの本人確認が入る。法律や事業者案内から確認できるのはここまでで、政府がどの個別目的を重視しているかを推測で足すべきではありません。

つまり今回の制度変更は、ネット全体の発言を片っ端から実名化する話というより、ロシア系ドメインの管理操作を本人確認と結びつける話です。サイトの閲覧者に本名を表示する制度でもありません。対象となる層と操作を分けて読むと、変化の範囲が見えます。

即時削除ではなく更新時に効く

制度変更の効き方もポイントです。9月1日に既存ドメインが一斉に消えるのではなく、本人確認なしでは新規登録や更新などの手続きを進められなくなります。

TCIは、新ルールのもとで登録や更新に確認が必要だと示しています。REG.RUも、個人や個人事業主はGosuslugi経由で今から認証できると案内し、非居住者向けには、外国人もGosuslugiを作成できること、さらに外国企業など向けにTrusted Administratorの仕組みを用意したと説明しています。これは逆に言うと、要件を満たせないまま放置すると、次の更新時に困るということです。

持ち主は9月1日にただちに利用不能になるとは限りませんが、更新期限が近いほど準備を急ぐ必要があります。制度上は、更新や管理変更の時点で要件への適合を求める形で効いてくるわけです。

外国人全面禁止ではない

もう一つ大事なのは、「外国人はもう .ru を使えない」とまでは言えないことです。REG.RUは、外国人でもGosuslugiアカウントを作成できると案内し、非居住者向けにTrusted Administratorも出しています。

もちろん、実務のハードルは上がるでしょう。言語、手続き、ロシア国内の制度理解、追加コスト。そこは軽くありません。ただ、制度の文面やレジストラの案内から直ちに「全面禁止」とは読めない。ここを大げさに書くと、ニュースの意味をかえって雑にします。

また、この話をそのまま .com.jp に広げるのも禁物です。今回の変更はロシアの制度とロシア系ドメインの話であって、世界のドメイン制度が一律でそうなるというニュースではありません。

日本の読者にとっての意味

日本の読者にとってこのニュースが大事なのは、インターネットの住所であるドメインが、技術だけでなく各国の法律や本人確認制度にも左右される資産だと見えてくるからです。

海外向けに国別ドメインを持つ企業や個人にとって、更新はWeb担当だけの作業では済まない場合があります。本人確認、現地制度への対応、名義情報の整合、更新期限の管理まで含むからです。URLは同じでも、維持に必要な手続きは国ごとに変わりえます。

どこまで広がる話か

このニュースを読むとき、二つの広げすぎに注意したいです。ひとつは、「ロシアだから何でも極端にやる」という雑な理解です。今回の制度は実際に管理を強める方向ですが、文面や事業者案内を見る限り、やっていることはドメイン管理に本人確認を強く結びつける、というかなり具体的な制度変更です。大きい話に見えて、手触りはかなり事務的です。

もうひとつは、「じゃあ世界中こうなる」という読み方です。各国のドメイン制度、本人確認の考え方、プライバシーや表現の扱いはかなり違います。今回のロシアの措置を、そのまま日本の .jp や汎用の .com に当てはめることはできません。ただし、国別ドメインは各国法の影響を受けるという基本は、海外ドメインを選ぶときの判断材料になります。

つまり、このニュースはロシア固有の制度変更でありつつ、ドメインを選ぶときは取得価格だけでなく、更新条件と本人確認方法まで見る必要があると教えています。そこが今回の制度変更の実務的な影響です。

サイトの中身が同じでも、ドメインを登録、更新、移管できなければ運用は続きません。今回変わるのはコンテンツそのものではなく、その入口を維持するための本人確認手続きです。この二つを分けると、「ネット全体の実名制」という読み違いを避けられます。

まとめ

今回の中心問いへの答えは、国別ドメインに国家本人確認が入ると、登録や更新などの管理操作と、確認済みの管理者情報が結びつく、です。

2026年9月1日からのロシアの新要件は、.ru.рф.su の管理をGosuslugiと結びつけ、登録や更新を本人確認と連動させます。未確認なら即没収、外国人全面禁止、ロシアネット全体が一気に実名制、とは言えません。確認できる変化は、本人確認なしでは重要操作ができず、更新不能や失効のリスクが生まれることです。

Sources