Xの収益化がまた変わります。こういう話を聞くと、「で、結局また条件が増えただけでしょ」と身構える人も多いと思います。気持ちは分かります。SNSの収益化の話、たまに利用規約の森で遭難しそうになりますからね。

でも今回の変更は、単なる条件追加として見るより、「何にお金を払うつもりなのか」の軸が動いたと読むほうが大事です。Xは、たくさん投稿した人や再投稿で回した人より、オリジナルな内容を出して、それがちゃんと見られた人へ寄せたいのではないか。今回の本題はここです。

X、「クリエイター収益分配プログラム」終了へ──「オリジナル投稿」に絞った新報酬制度に移行
X、「クリエイター収益分配プログラム」終了へ──「オリジナル投稿」に絞った新報酬制度に移行

Xは「クリエイター収益配分プログラム」を終了し、新制度「Original Content Rewards Program」への移行を発表した。無断転載やインプレゾンビへの対策として自作コンテンツを重視し、有料会員の有効インプレッションに応じて報酬を支払う。既存制度からの申請は9月より開始される。

今回の登場人物

  • X: 旧Twitterです。投稿の場であるだけでなく、Premium加入や認証、収益化条件を組み合わせて、投稿の作り方そのものにも影響を与えるサービスです。
  • 旧クリエイター収益配分プログラム: これまでの収益化制度です。Xは2026年8月7日に終了を発表し、同日、新規受付も止めました。
  • Original Content Rewards Program: Xが新たに案内した報酬制度です。名前の通り、オリジナルな内容を重視する仕組みだと読めます。
  • 有効インプレッション: ただ表示回数を数えるのではなく、Premiumユーザーからの「有効な表示」などを基準にする考え方です。とにかく回ればいい、とは少し違います。

何が起きたか

ITmediaによると、Xは8月7日、旧クリエイター収益配分プログラムの終了を発表しました。同日、新規受付も停止しています。

既存ユーザー向けの支払いはすぐゼロになるわけではなく、報道では、対象期間は9月7日分までです。支払日は8月14日、8月28日、そして最終が9月11日ごろとされています。その後、9月8日以降に新制度「Original Content Rewards Program」へ申請できる流れです。

ここで見えてくるのは、旧制度を閉じて新制度へ乗り換えるだけではなく、報酬の考え方そのものを入れ替える動きです。看板の掛け替えというより、採点表の作り直しに近いんですね。

有効表示へ寄る

新制度では、Premiumユーザーからの有効インプレッションなどが報酬の軸になります。さらに、投稿の50%以上がタイムライン上に表示された閲覧であることも、有効と数える条件に入っています。

この条件が示しているのは、「大量投稿できる人が強い」より、「実際に見られる場所に載り続ける人が強い」へ寄せたい、という方向です。フォロワーが多いだけでも足りないし、ただ再投稿で回して数字を作るだけでも厳しくなる可能性があります。

もちろん、ここで「必ず質が上がる」と断定はできません。制度設計と実際のタイムラインの振る舞いは別の話です。ただ、報酬の入口が表示回数の総量から、条件を満たす表示へ移ったとは読めます。

独自性はどこまで求めるのか

Xは新制度で、継続的なオリジナル投稿を条件に入れています。オリジナルの意味も、ただ「初出ならOK」ではありません。本人の声、視点、専門性、創造性があることを重視し、意味のあるコメント、文脈の追加、分析、創造的な編集も含めるとされています。

ここはわりと大事です。ゼロから全部自作の長文だけが正義、という話ではありません。ニュース紹介でも、自分の分析や整理があれば対象になりうる。一方で、他人の内容を薄くなぞっただけでは厳しい。つまりXは、「何を言ったか」だけでなく「あなたが言う意味があるか」を見たいわけです。なかなか容赦がない。でも論点は分かりやすいです。

何が外れやすいのか

除外対象として示されているのは、コピーや再アップロード、自動投稿や生成投稿、収益化のコツだけを延々語る投稿、誤情報などです。広告やプロモーション、不正な行為も外れます。

この並びを見ると、新制度は「プラットフォームの中で増幅しやすいもの」より、「その人の中にしかないもの」を残したいように見えます。逆に言うと、再投稿中心の運用や、量産の自動化に寄った運用は、以前より報酬につながりにくくなる可能性があります。

参加条件も軽くない

オリジナルな投稿を一つ書けば、すぐ報酬が始まるわけでもありません。ITmediaが伝えた新制度の参加条件には、18歳以上で対象国にいること、XのPremium、Premium+、またはPremium Businessを利用していること、認証済みフォロワーが500人以上いることなどが含まれます。日本は対象国に入っています。

さらに、直近90日で、認証ユーザーからのホームタイムライン上のインプレッションが50万以上必要です。返信で得た表示はここに含まれません。規約違反を繰り返していないことや、継続的にオリジナル投稿をすることも求められます。

つまり新制度は、「独自性を重視します」という作文だけではなく、誰の表示を数えるか、どこで表示されたか、どれくらい継続して届いたかまで条件にしています。オリジナル性は入場条件の一つで、到達規模や有料会員との接点も同時に見られる。文化祭の作品審査だけでなく、会場に観客を呼べたかまで採点表に入った感じです。

この点は、「質がよければ小さな投稿者もすぐ稼げる制度になった」とは言えない理由でもあります。認証済みフォロワー数や50万表示という門があります。独自性重視という方向と、参加のハードルが低いかどうかは別問題です。

AIをどう読むべきか

ここで雑に「AI禁止になった」とまとめるのは違います。Xが一律にAI利用を禁じた、とまでは確認できません。

注意したいのは、「AIを使ったかどうか」より、「中身がコピー的か、自動量産的か、本人の視点があるか」です。生成投稿が除外対象に入っているからといって、AI支援を受けた表現がすべてだめだと、ここからは言えません。今回の報道から確認できる線は、自動化や生成による量産を報酬対象から外すというところまでです。

同じように、「有効インプレッション」という名前だけで、その表示が内容の質を保証すると考えるのも早計です。有効かどうかは制度が定めた数え方の話で、投稿が正確か、役に立つか、面白いかを人間が採点した結果とは限りません。数え方を厳しくすることと、内容が必ず良くなることは、似ているようで別の話です。

じゃあ何を変えるべきか

この制度変更が投稿行動をどう変えるかは、まだ可能性の話です。ただ、収益化を狙う人にとっての含意はいくつかあります。

まず、再投稿中心より、自分の視点を足した投稿の比重を上げる動きは強まりそうです。次に、単発でバズるより、ホームタイムラインで継続的に見られる運用が重くなるかもしれません。さらに、認証フォロワー500人以上、過去90日で認証ユーザーからホームタイムライン50万以上、しかも返信は除外という条件を見ると、参入のハードルはかなり低いとは言えません。

要するに、新制度は「とにかく数を打つ人」より、「継続して、自分の名前で見られる人」を選びにいく設計に見えます。SNS版の出席点より、提出物の中身を見ますよ、という顔つきです。

まとめ

Xの新しい収益化は、量や再投稿から、オリジナル内容とPremiumユーザーからの有効表示へ軸を移そうとしているように見えます。旧制度の終了日程もはっきりしていて、9月にかけて制度の切り替えが進みます。

大事なのは、「AIがだめ」や「日本語圏が必ず有利になる」といった雑な読み方をしないことです。現時点で言えるのは、Xが報酬の基準として、本人の声、継続性、そしてちゃんと見られたかを以前より重く見ようとしている、というところです。たくさん流す時代から、何を出して誰に届いたかを問う時代へ、少し針を動かしたのかもしれません。

Sources