国債の想定金利が3.8%になるかもしれない、と聞くと、つい「政府、かなり金利が上がると思ってるじゃん」と身構えますよね。数字が大きいので、どうしても予言みたいに見える。でも、ここをそのまま相場見通しとして読むと、ニュースの芯を外します。
テレビ朝日は8月21日、財務省が2027年度予算の概算要求で、国債の利払い費の算定に使う想定金利を3.8%とする方向で調整していると報じました。今回の本題は「政府は高金利を断言したのか」ではなく、「金利のある世界で、予算不足を避けるための防波堤をどこまで高く積もうとしているのか」です。

財務省は来年度予算の概算要求で国債の利払い費の想定金利を3.8%にする方針です。 財務省は来年度=2027年度予算の概算要求で国の借金にあたる国債の利払い費を算定する根拠となる想定金利を3.8%にす
今回の登場人物
- 想定金利: 国債の利払い費を予算に入れるときの前提金利です。天気予報そのものというより、雨が強くても困らないよう傘を何本持つかを決める数字に近いです。
- 市場金利: ニュースでよく見る10年国債利回りなど、市場でその瞬間に決まる金利です。毎日動きます。
- 既発債の利率: すでに出してある国債に付いている利率です。あとから勝手に全部3.8%へ書き換わるわけではありません。
- 借換え: 満期が来た国債を、新しい国債を出して返すことです。金利上昇の影響は、この借換えを通じてじわじわ広がります。
- 後年度試算: 財務省が一定の前提で機械的に出す数年先の歳出入の試算です。未来の確定表ではなく、前提を置いた見取り図です。
何が起きたか
テレビ朝日によると、財務省は2027年度予算の概算要求で、想定金利を3.8%へ引き上げる方向です。記事は、前年の概算要求時の2.6%から大きく引き上げる形だと伝えました。さらに、8月18日に新発10年国債利回りが一時2.945%まで上がったことも紹介しています。
ここでいちばん大事なのは、「想定金利3.8%」と「市場の10年金利2.945%」と「すでに発行済みの国債に付いている利率」は、同じものではないという点です。名前が似ているので混ざりやすいのですが、役割がぜんぜん違います。
市場金利は、その日の相場です。既発債の利率は、すでに発行した国債に固定された過去の約束です。想定金利は、その上で来年度予算に利払い費をどれくらい計上するかを決めるための見積もりです。つまり、想定金利3.8%を見て「市場はもう3.8%だ」と読むのは、定期テストの予想問題と本番の点数表を同じ紙だと思うくらい、けっこう危ない混線なんです。
ここが本題
3.8%の本当の意味は、「政府の金利観が強気か弱気か」だけではありません。もっと実務的で、でもずっと重い話です。国債費を甘く見積もると、あとで予算が足りなくなる。だから財務省は、高めの波が来ても慌てにくい前提を置こうとしている、と読んだほうが筋が通ります。
財務省は国債費の積算金利について、実勢金利を踏まえつつ、国債費が不足しないよう十分な予算計上を行う観点も踏まえて設定すると説明してきました。要するに、相場の一点当てではなく、外したときに困らないほうを重く見るわけです。役所の数字なので地味ですが、発想としてはかなり防災寄りです。河川敷で「今日は晴れてるから堤防いらないでしょ」とは言わない、あの感じですね。
3つの金利を分けると見え方が変わる
このニュースでいちばん誤解しやすいのは、「想定金利が3.8%なら、国の借金全部の利払いがすぐ3.8%になる」と思ってしまうことです。でも、そうはなりません。
国債は満期までの年限がばらばらです。昔の低金利時代に出した国債も大量に残っています。そのため、金利上昇の影響は、新しく出す国債や借換え分に少しずつ乗っていきます。今日の市場金利が上がっても、残高全部が翌朝いきなり高金利化するわけではない。ここ、じわじわ型です。
逆に言うと、すぐ全部に効かないから軽い、でもありません。借換えが進むほど、高い金利の影響が残高全体にゆっくり広がっていく。派手に爆発しない代わりに、湿気みたいに長く居座る。財政にとってはこっちのほうが嫌だったりします。
後年度試算は「3.8%の証明書」ではない
財務省の2026年度予算ベースの後年度試算には、金利前提を1ポイント押し上げた機械試算も載っています。それによると、国債費は2027年度に0.8兆円、2028年度に2.1兆円、2029年度に3.8兆円増える姿が示されています。
ただし、ここは読み方に注意が必要です。この試算は、今回報じられた「概算要求で想定金利3.8%へ」という話をそのまま裏書きする資料ではありません。一定の前提を置いた別条件の機械計算です。なので、「ほら公式に3.8%が確定してる」と使うのは言いすぎです。
でも、意味がないわけでもありません。大事なのは、金利が1ポイントずれるだけでも、年を追うごとに国債費への影響が膨らみやすいことが見える点です。最初の年より、その次、その次のほうが重くなる。つまり金利上昇の怖さは、ニュースの見出しが出た当日より、少し遅れて家計簿に効いてくるところにあります。
前年の2.6%と何が違うのか
今回の3.8%が目立つのは、前年の概算要求時が2.6%だったからです。1.2ポイントの差は、株価ならまだしも、国債費の前提金利としてはかなり大きい。しかも、その間に市場の10年金利は8月18日に一時2.945%まで上がったと報じられています。想定金利は市場金利そのものではありませんが、「低めに積んでおけば大丈夫」という時期ではなくなったことは伝わってきます。
ここで大事なのは、概算要求の段階では「まず足りなくならないように置く」性格が強いことです。最終予算までには見直しが入りえます。だから3.8%を見て「来年は絶対にこの水準だ」と決め打ちするのも違うし、「どうせ役所の仮置きだから無視していい」と流すのも違う。避難訓練の集合場所みたいなもので、実際にそこへ行くかとは別でも、どこを危険だと思っているかは分かるんです。
なぜ日本の読者に関係あるのか
このニュースは、すぐ「財政危機だ」「即増税だ」と短絡して読む話ではありません。まだ概算要求段階ですし、年末の予算編成で数字は動きます。
それでも見逃せないのは、財務省が高めの前提を置かないと怖いと感じるほど、金利上昇が財政運営の現実になってきたことです。国債費が重くなると、防衛、社会保障、子育て、教育、地方支援みたいな他の予算とのせめぎ合いが厳しくなります。家計でいえば、住宅ローンの見積もり欄が膨らむと、旅行や塾や家電買い替えの相談が急に現実的になる、あれです。夢の話をする前に、利息が先に席へ座る。
だから3.8%は、単なるテクニカルな数字ではありません。「政府がどれだけ高金利を予想しているか」より、「高めの前提を置かないと予算が危うい局面に入っているか」を示す数字として読むほうが、中身のある理解になります。
まとめ
国債の想定金利3.8%は、市場金利そのものでも、既発国債の利率でもありません。来年度予算で利払い費を不足させないため、実勢金利と安全余白を踏まえて置く前提値です。
しかも、金利上昇の負担は借換えを通じて時間差で効きます。だから本当に見るべきなのは、3.8%という数字の派手さより、その数字を高めに置かざるを得ないほど国債費の余裕が細ってきていることです。ここまで読めると、このニュースは「高いか低いか」の話ではなく、「財政の逃げ道がどれくらい狭くなっているか」の話だと見えてきます。