来年度予算の概算要求が143兆円前後になりそうだ、と聞くと「うわ、でかい」「もう数字が体育館の天井くらい高くて感覚が消える」となりますよね。ですが今回の本題は、その143兆円という見出しの大きさそのものではありません。むしろ見るべきは、上限を設けない「強く豊かな日本」投資枠と、金額を書かないまま要求できる「事項要求」が広がっていることなんです。

来年度予算案の編成に向けて各省庁からの概算要求の総額が過去最大、143兆円前後となる見通しであることがわかりました。来年度予算案の編成に向けて、霞が関の各省庁からの概算要求は、きのう(31日)締め切りを…
今回の登場人物
- 概算要求: 各省庁が「来年度はこれだけ予算が必要です」と財務省に出す最初の要求書です。いわば年末の本番前に出す下書きで、ここに書かれた額がそのまま最終予算になるわけではありません。
- 財務省: 国の家計簿を握る役所です。各省庁の要求をそのまま通す係ではなく、「本当にそこまで要る?」と査定する、かなりシビアな財布番です。
- 強く豊かな日本投資枠: 高市政権が来年度予算で新たに設けた枠です。成長投資や危機管理向けを想定していますが、要求の上限を設けない仕組みが特徴です。財布のひもが最初から長め、というより「長さ未設定」です。
- 事項要求: 金額を示さず、「この政策は必要です」と項目だけ先に要求するやり方です。あとで金額が乗る余地があるので、見た目の総額より膨らみやすくなります。
- 国債費: 国債の元本返済や利払いに回すお金です。借金の後始末費みたいなものですが、額が大きいので冗談みたいに重い。今回は36.6兆円と過去最大の見通しです。
何が起きたか
TBS CROSS DIG with Bloombergは9月1日、2027年度予算案の編成に向けた各省庁の概算要求総額が、一般会計で143兆円前後となる見通しだと報じました。8月31日に締め切られた要求をJNNが集計した結果で、過去最大になる見込みです。
ただ、ここで「143兆円に決まった」と受け取るのは早すぎます。概算要求はまだ入り口ですし、記事でも、最終的な予算はさらに膨らむ見込みだとされています。理由は二つあります。ひとつは、高市政権が設けた「強く豊かな日本」投資枠で、要求額が10兆円を超えていること。もうひとつは、金額を示さない事項要求が多いことです。
ここが本題
今回のニュースを「143兆円で過去最大」とだけ読むと、本当の論点を半分落とします。大事なのは、総額が大きいこと以上に、「まだ確定していないのに膨らみやすい仕組み」が前面に出ていることです。
たとえば、普通の概算要求なら、ある程度は「この政策にはいくら」と数字が見えます。もちろん盛り気味にはなりますが、少なくとも財布の中身をのぞく手がかりはある。でも事項要求は、その数字欄が空白のまま走り出せる。レストランでメニューだけ決めて値段はあとで、みたいなものです。ちょっと怖い。
しかも、今回の投資枠は要求上限を設けない仕組みです。財務省が7月30日に示した概算要求基準でも、この新たな投資枠では上限を設けず、必要な予算金額を示さない要望も可能とされました。つまり、各省庁にとっては「まずは必要性を広く置いておく」動きがしやすいわけです。
143兆円は「最終予算」ではない
ここはかなり大事です。143兆円前後という数字は、もう国会で通る予算額ではありません。あくまで各省庁が出した要求の積み上げです。年末に向けて財務省査定が入り、そこから政府予算案が固まり、さらに国会審議を経ます。
では、なぜ見出しになるのか。理由は単純で、要求の段階でも政治の方向がかなり見えるからです。今回は「責任ある積極財政元年」を掲げる政権のもとで、成長投資や危機対応を当初予算に載せようとする意志が、かなりはっきり出ています。いつもの大型補正予算に逃がすのではなく、最初から本予算で抱える方向を強めている、という読み方もできます。
ただし、それがそのまま「全部よい投資です」とは限りません。上限のない枠や事項要求が増えるほど、あとで本当に効果があるか、重複していないか、民間投資を呼ぶのか、それとも単に歳出がふくらむだけなのかを見分ける査定の力が問われます。ここで財務省の仕事が雑だと、家計簿に「なんか必要そう」な出費が増えるだけです。人の家計ならかなり怒られるやつです。
もう一歩かみ砕くと、今回の143兆円は「完成品の値札」ではなく、「買い物かごに入っている候補の合計」に近いです。しかも今回は、その買い物かごの中に、あとから値段を書く商品票が混ざっている。だから見出しの金額だけ追うと、財政のゆるさや厳しさを読み違えやすいんです。
読者としては、「過去最大」という言葉にびっくりしたあと、次に「その中で、いくらが確定的で、いくらがあとで膨らみうるのか」を見分けるのがコツです。予算ニュースは数字の迫力で押してきますが、実は勝負どころは内訳とルールです。テストで言えば点数の大きさだけ見るのではなく、配点表を見る場面ですね。
金利上昇で国債費が重くなる意味
もうひとつ見逃せないのが国債費です。報道では、国の借金の返済や利払いにあてる国債費が今年度より5兆円以上増え、36.6兆円で過去最大になる見通しとされています。テレビ朝日の報道では、想定金利が今年度当初予算の3.0%から3.8%へ引き上げられたことが利払い費増加の主因だと説明されています。
これ、地味に見えてかなり重要です。成長投資に回したい、社会保障費も要る、防衛費も増える、でも金利が上がると借金の利払いも重くなる。つまり政府は、「前に進む費用」と「過去に積み上がった借金の費用」を同時に抱えることになります。自転車の前かごにも後ろかごにも荷物が増えて、しかも坂道、みたいな状態です。
だからこそ、今回の本当の問いは「143兆円は多いか少ないか」ではなく、「膨らみやすい要求を、金利上昇下でどこまで選別できるか」です。
日本の読者にとって何が大事か
日本の読者にとって重要なのは、「大型予算=景気にいい」でも「膨張=即アウト」でもなく、何にどう使うかを見分ける目を持つことです。
たとえば、災害対応、半導体、エネルギー安全保障、サプライチェーン強化のように、将来の危機や成長に効く支出はあります。一方で、効果があいまいなまま広く積まれれば、金利上昇時代には財政の重さがあとで効いてきます。税や社会保険、物価、国債市場の安定感にもつながるので、「国の予算の話は遠い世界」とは言いにくいんです。
高校生向けに一言でいえば、今回のニュースは「金額の大きさコンテスト」ではありません。「あとでどこまで増えるか」と「増えるとして、その中身に筋が通っているか」を見るニュースです。
だから年末に向けて見るべきポイントも、かなり具体的です。まず、事項要求だった政策にどんな金額が付くのか。次に、青天井の投資枠に積まれたもののうち、何が本当に当初予算に残るのか。さらに、国債費の重さがほかの政策経費をどこまで圧迫するのか。この三つを見るだけでも、「ただ大きい予算」という雑な理解からはかなり抜け出せます。
言い換えると、今回の予算ニュースは「143兆円という答え」を見る話ではなく、「どうやってその答えが作られていくか」を追う話です。数字の花火だけ見て終わると、あとで中身を見たときに「あれ、思っていたのと違う」となりやすい。そこまで読めると、予算記事の見え方がだいぶ変わります。
まとめ
143兆円前後という概算要求総額は確かに大きいですが、それだけで来年度予算の姿は読めません。今回の核心は、上限のない投資枠と事項要求が、最終予算をさらに膨らませうる設計になっていることです。
なので読むべきポイントは、「過去最大」の派手さではなく、年末までの査定で何が絞られ、何が残るのか。予算の本当の勝負は、ここからなんです。