オンライン診療というと、スマートフォンに医師の顔が映れば完成したように見えます。でも通院でしていることは、診察だけではありません。受付で本人と保険情報を確かめ、症状を伝え、医師が診察し、必要なら処方箋が出て、薬剤師の説明を受け、最後に薬を手元へ持ち帰ります。

東京都日野市のUR高幡台団地では2026年9月29日、この流れを地域内でつなぐオンライン診療受診施設が始まりました。診察場所は団地76号棟101号室で、薬は近くの「ハッピーローソンタウン」内にあるクオール薬局で受け取れる設計です。

では、これはどこまで通院の代わりになるのでしょう。今回見るのはビデオ通話の画質ではありません。受診前の手続きから薬の受取まで、誰がどの区間を受け持ち、どこに切れ目が残っているかです。

ハッピーローソンタウンにオンライン診療施設 診療と薬の受取を地域完結
ハッピーローソンタウンにオンライン診療施設 診療と薬の受取を地域完結

ローソンは、8月に開店した、マチづくり構想「ハッピーローソンタウン」の集合住宅型1号店舗「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」において、9月29日からKDDIの「次世代リモート接客プラットフォーム」を活用した「オンライン診療受診施設」を開設する。

今回の登場人物 ​

  • オンライン診療受診施設:患者が医師のオンライン診療を受ける場所です。2026年4月、医療法上の「医療提供施設」の一つに位置付けられましたが、病院や診療所そのものではありません。
  • ローソン:高幡台団地に受診場所を設け、地域の生活拠点として運営に加わります。ローソンの店員が診断や処方をするわけではありません。
  • KDDI:医療機関と受診場所をつなぐ遠隔サービスの基盤を提供します。通信と手続きの道をつくる役で、医療判断をする役ではありません。
  • イーヘルスクリニック新宿院とLSクリニック東京:画面越しに患者を診察する医療機関です。薬を処方するか、対面診療が必要かを医師が判断します。
  • クオール薬局:薬剤師が処方内容を確認し、服薬指導と調剤を担います。今回、薬を地域内で受け取る最後の区間を担当します。
  • UR都市機構:高幡台団地を管理し、地域拠点づくりの場所を支える主体です。医療機関ではありません。

何が起きたか ​

Impress Watchは9月29日、高幡台団地でオンライン診療受診施設が始まったと報じました。場所は東京都日野市程久保650、団地76号棟101号室です。ローソンの公式発表によると、団地内にあった医療機関は2018年に閉院し、現在は団地内に医療機関がありません。

ここで「近隣には病院が一つもない」と話を広げないようにしましょう。確認できるのは、あくまで団地内の状況です。今回の施設は、住民が暮らす団地の中へオンライン診療を受ける場所を設け、近くの薬局とつなぐ取り組みです。

診療科は内科、アレルギー科、不眠症外来、発熱外来です。診療するのはイーヘルスクリニック新宿院とLSクリニック東京。利用者は専用端末で診療科と医療機関を選び、自分のスマートフォンで問診や保険情報の登録をした後、医師のオンライン診療を受けます。医師が必要と判断して処方した場合は、ハッピーローソンタウン内のクオール薬局で薬を受け取れます。

受診施設はローソン店舗の中ではなく、近くの76号棟101号室にあります。診察場所と薬局は近いけれど、同じ部屋ではない。この小さな地理の違いが、今回の「地域内でつなぐ」という設計を理解する出発点です。

診察前の入口 ​

オンライン診療になっても、受付だけが画面の外へ消えるわけではありません。まず、どの診療科と医療機関を選ぶかを決めます。次に問診を入力し、保険情報を登録します。制度上は、医療機関が患者本人であることを確認する必要もあります。

高幡台では、診療科と医療機関の選択には施設の専用端末を使い、問診と保険情報の登録には利用者自身のスマートフォンを使う流れが案内されています。つまり「施設へ行けば、後は全部備え付け端末がやってくれる」とは限りません。

では、本人確認はどの画面で、どんな情報を使って行うのか。予約や支払いはどうするのか。スマートフォン操作に迷ったとき、誰がどこまで助けるのか。開始時点の公表資料では、こうした具体的な運用までは確認できません。

オンライン診療の入口は、医師の顔が映る画面ではなく、その前にあります。駅が近くても、切符の買い方が分からなければ列車には乗れません。本人確認、保険登録、問診は、いわば医療の改札口です。ここでつまずかず診察へ進めるかも、通院の代わりになれるかを左右します。

もちろん、スマートフォンを使う高齢者が全員苦手なわけではありませんし、若ければ必ず迷わないわけでもありません。大事なのは年齢で決めつけることではなく、実際にどこで操作が止まり、どんな支援が必要だったかを今後の利用データで見ることです。

診察する人 ​

この仕組みでは、「場所を用意する人」「通信の道をつくる人」「診察する人」が別々です。

ローソンは受診施設を開設し、KDDIは「次世代リモート接客プラットフォーム」を提供します。UR都市機構は団地という場所を支え、日野市も地域活性化やデジタル活用などを含む連携に参加しています。ただし、診察し、処方の要否を決めるのは、イーヘルスクリニック新宿院とLSクリニック東京の医師です。

2026年4月に施行された改正医療法では、オンライン診療を受けるための場所が「オンライン診療受診施設」という医療提供施設に位置付けられました。ただし、それ自体が病院や診療所になるわけではありません。遠隔地にいる医師が患者を診察できるよう、医療機関へ場所を提供する施設です。

医療機関の管理者は、受診施設が必要な基準に合っているかを確認します。必要な場合に近くの医療機関で対面診療を受けられるようにするなど、緊急時を含む連携も求められます。通信回線がつながれば医療体制も自動的に完成、という仕組みではないんですね。

だから、ローソンの店員が診断したり、KDDIが処方を決めたりするわけではありません。診察画面の終了ボタンも、医療のゴールテープではありません。医師の判断を、次の処方と薬局へ渡す区間が残っています。

薬までのリレー ​

医師は診察したうえで、薬が必要かを判断します。オンライン診療を受けたら必ず処方箋が出るわけではありません。処方が必要と判断された場合に、その情報が薬局へつながります。

薬局では薬剤師が処方内容を確認し、薬の使い方や注意点を伝える服薬指導を行い、調剤します。高幡台の仕組みでは、ハッピーローソンタウン内のクオール薬局で薬を受け取れると案内されています。診察場所から遠くの薬局へまた移動する負担を減らせる可能性がある。ここが「地域内で完結」を目指す最後の区間です。

ただし、公表資料だけでは、服薬指導を対面で行うのかオンラインで行うのかは確認できません。紙の処方箋か電子処方箋か、処方情報がどのように薬局へ送られるか、薬の在庫がない場合にどうするか、診察から受取まで何分かかるかも不明です。

時間にも切れ目があります。イーヘルスクリニック新宿院の診療枠には日曜日の午前10時から午後4時までが含まれます。一方、クオール薬局の営業は月曜日から土曜日で、日曜・祝日は休みです。平日でも診療時間と薬局営業時間が完全に一致するわけではありません。

つまり「地域内で完結」は、主に場所の近さを示す言葉として読むのが安全です。どの時間帯でも診察直後に薬を受け取れる、という意味ではありません。場所は近くても、診療枠と薬局は同じ時計で動くとは限らないわけです。

オンライン診療を通院の代わりにするには、問診から診察へ、診察から処方へ、処方から薬剤師へ、薬剤師から患者へと情報と薬を渡す必要があります。リレーは走者が近くに集まるだけでは完走しません。バトンが次の人へ渡って初めて、最後までつながります。

対面診療との境界 ​

オンライン診療には、画面越しだからこその限界もあります。医師は患者に触れて診察する触診ができず、得られる情報が対面より限られます。厚生労働省の指針は、オンライン診療と対面診療を適切に組み合わせることを基本にしています。

医師がオンラインでは十分に判断できないと考えれば、対面診療へ切り替える必要があります。原則として、患者の状態を継続して把握しているかかりつけ医が行うという考え方もあります。オンライン診療受診施設は、すべての受診を画面へ置き換える場所ではありません。

高幡台の診療科には発熱外来も含まれますが、「発熱外来があるから、緊急性の高い症状にもすべて対応できる」とは言えません。どんな場合に対面へ切り替え、どの医療機関につなぐかという具体的な現場手順は、今回確認した公表資料には示されていません。

通院代替という言葉も、「一度も病院へ行かなくてよくなる」という意味ではなく、オンラインで安全に完結できる受診について、移動を減らせる可能性がある仕組みと捉えるほうが正確です。便利さと診療上の限界は、どちらか一方を消せばよい話ではありません。

代替になったかはこれから ​

団地の中に受診場所があり、近くに薬局がある。医療機関までの移動が負担になる人にとって、これは使いやすさを高める可能性があります。ただし施設は9月29日に始まったばかりです。開始時点では、利用者数、待ち時間、診察まで進めた割合、薬を受け取れた割合、移動負担がどれほど減ったかといった実績は確認できません。

ローソンはこれまで東京都港区や埼玉県熊谷市の店舗でもオンライン診療の機会を提供してきました。しかし、それは高幡台で同じ結果が出たことの証明ではありません。場所、利用者、診療科、薬局までの導線が変われば、使われ方も変わりえます。

今後見るべきなのは、端末を何台置いたかだけではありません。問診を始めた人が診察まで進めたか。処方後に薬を受け取れたか。対面診療へ切り替えた場合、次の医療機関まで切れずにつながったか。操作支援が必要な場面はどこだったか。こうした受け渡しの記録が、通院代替としての実力を教えてくれます。

オンライン診療を支えるのは、画面一枚ではありません。本人確認、保険情報、問診、医師の診察、処方、薬剤師の服薬指導、薬の受取。その全部がつながり、必要なときには対面診療へ渡せることが大切です。

まとめ ​

高幡台団地のオンライン診療受診施設では、専用端末と自分のスマートフォンを使って受診準備をし、二つの医療機関の医師が診察します。医師が必要と判断すれば処方が行われ、近くのクオール薬局で服薬指導と調剤を経て薬を受け取れる設計です。

ただし、具体的な本人確認、処方箋の伝達、操作支援、待ち時間などは開始時点で未確認です。対面診療が必要な場合もあり、診療枠と薬局営業時間も完全には一致しません。

通院の代わりになれるかを決めるのは、画面がつながったかどうかだけではありません。受診前から薬を受け取るまで、必要なバトンが落ちなかったかです。高幡台でそのリレーがどれだけ走り切れるかは、これからの利用実績を見て判断することになります。

Sources ​