大分県内で学ぶ留学生は3569人。人口10万人当たり331.4人で、4年連続の全国3位だと報じられた。温泉県のもう一つの顔は、かなり国際的な「学びの県」である。

ただし、本当に見るべき数字は入学時の人数だけではない。卒業後、県内の企業や地域生活へつながる線をどれだけ引けるか。留学生を呼ぶことが「到着」なら、地域にとっての本番はそこからだ。

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今回の登場人物

  • 外国人留学生: 今回の3569人は、大分県内の大学などで学ぶ留学生を数えた2025年度集計。全国統計には日本語教育機関まで含む別集計もあるため、比較時は範囲の確認が必要だ。
  • 大分県: 別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)をはじめ、外国人留学生を多く受け入れてきた地域。人数だけでなく、人口当たりの多さが目立つ。
  • 国内就職率: 日本の高等教育機関を卒業・修了し、国内進学を除いた留学生のうち、日本企業などへ就職した人の割合。県内就職率とは別なので、数字を混ぜると大分での定着は見えなくなる。
  • 在留資格: 日本で何をする人として滞在するかを定める法的な区分。卒業後に働くなら、仕事内容などに応じて「留学」から就労可能な資格へ変更する必要がある。

何が起きたか

TBS NEWS DIG/大分放送は2026年7月11日、大分県内の留学生が前年より増えて3569人となり、人口10万人当たり331.4人で4年連続の全国3位だったと報じた。

大分が急に一晩で国際都市になったわけではない。県が公表した2024年度の資料では、留学生は106の国・地域から3361人。中国539人、インドネシア402人、ミャンマー384人、韓国373人と出身地も幅広い。日本学生支援機構の留学情報サイトでも、2023年度は3492人と紹介されている。調査年や集計範囲をそろえないと単純比較はできないが、「数千人規模が学ぶ地域」という太い流れは確認できる。

ここで「留学生が増えました。国際交流、めでたし」で拍手だけして帰ると、記事の後半を丸ごと忘れている。大学は入口であって、卒業後の仕事、住まい、地域との関係が出口だからだ。

本題は定着への橋

留学生の多さは、それだけで地域の働き手が増えたことを意味しない。卒業後に東京や大阪へ移る人もいれば、母国や別の国へ進む人もいる。それは本人の自由な進路選択であり、県外へ出たから「失敗」ではない。

それでも、人口減少と人手不足に悩む地域から見れば、大分で学び、大分の暮らしを知った人が「県内で働く」という選択肢を持てるかは重要だ。呼び込んだ学生を労働力の在庫のように数えるのではなく、選ばれる就職先と生活環境を用意できるかが問われる。

文部科学省の2025年資料によると、2023年度に日本の高等教育機関を卒業・修了した外国人留学生のうち、国内進学者を除く4万3968人に対し、国内企業などへ就職した人は2万2688人。国内就職率は51.6%だった。政府は2033年までに6割へ引き上げる目標を置いている。

半分を超えた、とも読める。半分近くは国内就職に至っていない、とも読める。しかもこれは「日本国内」の数字で、「大分県内」の数字ではない。大分の3569人を地域の未来へ直結させるには、県単位の次の駅を見なければならない。

橋が切れる三つの場所

一つ目は、求人だ。文部科学省資料では、留学生側の課題として「留学生向けの求人が少ない」が最上位に挙げられている。企業が人手不足だと言いながら、募集要項は日本人の新卒採用を暗黙の標準にしている。入口に「歓迎」と書き、ドアは日本語の早押しクイズになっている、という残念な店構えだ。

二つ目は、日本特有の就職活動である。何月に説明会が始まり、自己分析をして、業界研究をして、エントリーシートを書く。日本で育った学生にも分かりにくい仕組みを、別の採用文化から来た学生が自力で解読するのは難しい。資料でも「日本の就職活動の仕組みが分からない」「日本語による適性試験や面接が難しい」といった壁が並ぶ。

三つ目は、採用後の生活だ。仕事が決まっても、行政手続き、医療、住居、子育て、災害情報が理解できなければ、長く住む判断はしづらい。職場の日本語研修だけでなく、地域の「やさしい日本語」、相談窓口、多言語情報までつながって初めて、定着は一本の道になる。

大分だから作れる近道

大分の強みは、すでに留学生が「珍しいお客さん」ではないことだ。大学、自治体、企業、地域団体が、ゼロから関係を作る段階を越えている。世界100超の国・地域から学生が来ているなら、学内の多様性そのものが企業にとっての学びにもなる。

必要なのは、卒業直前だけの合同説明会ではない。低学年から県内企業を知る授業、有給を含む実践的なインターンシップ、専攻と職務をつなぐ説明、採用担当者への異文化・在留資格研修を一本にすることだ。文部科学省の就職促進プログラムも、日本語教育、キャリア教育、インターンシップの一体提供を重視している。部品を三つ置くだけでは橋にならない。つないで初めて渡れる。

企業側にも翻訳が要る。「日本語が完璧な人」では広すぎる。会議、接客、技術文書のどこで、どの水準が必要なのか。逆に、多言語対応、海外取引、観光、製造現場の調整など、本人の経験をどの仕事で生かせるのか。仕事内容が具体的なら、応募する側も将来を描きやすい。

全国3位をゴールにしない

「人口当たり全国3位」は、大分の特徴を一瞬で伝える便利な順位だ。ただ、順位そのものは政策の成績表ではない。県の人口が減れば、留学生数が同じでも人口当たりの割合は上がる。逆に、学生が増えても、住居や相談窓口が追いつかなければ暮らしやすさは下がりうる。

さらに、留学生の出身地や在籍校は幅広い。2024年度の県資料では106の国・地域に及び、中国、インドネシア、ミャンマー、韓国など上位だけでも構成は一様ではない。必要な日本語支援、宗教・食文化への配慮、卒業後に望む進路も同じではない。「留学生」という一枚のラベルでまとめると、人数は見えても人が見えなくなる。

だから県や大学には、在籍数だけでなく、どんな支援が利用され、県内企業との接点がどこで生まれ、どこで途切れたかを公表してほしい。個人を特定しない形で進路の流れが見えれば、企業も学校も次の改善点を探せる。ランキングは入口の看板。運営に必要なのは、駅の中で人がどちらへ進んだか分かる案内図だ。

数える数字を一段進める

留学生数は入口の成果を測るには大切だ。だが、地域とのつながりを測るなら、県内インターン参加者、県内企業への応募者、卒業時の県内就職者、数年後の定着者まで追いたい。全員を県内に残す目標ではなく、「残りたい人が、情報や制度の壁で断念していないか」を見る数字である。

ここを間違えると、留学生を人口減少対策の便利な駒にしてしまう。本人には職業と居住地を選ぶ権利がある。その自由を前提に、それでも大分が選ばれる条件を整える。順番は大事だ。人を地域に縛るのではなく、地域のほうを選ぶに値する場所へ近づける。

3569人というニュースは、大分が人を呼べている証拠だ。次に問うべきは、その人たちが学んだあとにも「ここで働きたい」「ここで暮らせる」と思えるかどうか。留学生政策の深さは、改札を通った人数より、その先の路線図で分かる。

まとめ

大分県は、人口当たりで全国上位の留学生県である。しかし、留学生の多さと地域への定着は同じ数字ではない。求人、就職活動、在留資格、生活支援を一つの橋としてつなげなければ、大学への到着で線路は終わる。

大事なのは、留学生を「足りない働き手」として囲い込むことではない。大分で学んだ人が、自由な選択の結果として大分を選べる条件を作ること。3569人の次に数えるべきは、その選択肢がどれだけ開いているかだ。

Sources