修学旅行先を京都・奈良から函館へ変える学校が出ている。理由は猛暑――。見出しだけなら、話はそこできれいに収まりそうです。でも、ちょっと待ってください。学校行事は「北のほうが涼しそう。よし決定」で動けるほど身軽ではありません。生徒が200人いれば、200人分の座席、宿、食事、学習場所、引率の安全まで一緒に動きます。

9月21日のFNNプライムオンラインは、関東の公立中学校が函館方面を選ぶ動きと、2027年度に31校が予定しているという数字を報じました。暑さは確かに重要です。ただし函館が候補になった背景には、新幹線の団体輸送、料金、混雑回避、受け入れ施設、現地側の誘致が重なっています。修学旅行は、気温計一本では舵を切れない大きな船なんです。

【修学旅行は「京都・奈良」→「函館」】道南地方に旅行する関東の公立中学校は4年前が2校→2027年度は31校予定「北海道は新幹線で来られるし学習・娯楽・素敵がいっぱい」|FNNプライムオンライン
【修学旅行は「京都・奈良」→「函館」】道南地方に旅行する関東の公立中学校は4年前が2校→2027年度は31校予定「北海道は新幹線で来られるし学習・娯楽・素敵がいっぱい」|FNNプライムオンライン

9月は修学旅行のシーズン。関東の中学校は京都や奈良に旅行するのが定番だが、いま「函館」を選ぶ動きが広がり始めている。9月9日、北海道の新函館北斗駅に到着した約200人の中学生。東京都板橋区から修学旅行でやってきた。「本校にとっても新しい第一歩になりますので、子供たちにとって一生の思い出になる修学旅行にできれば」(東京都板橋区の中学校 内田善人校長)この学校では2025年まで京都と奈良に旅行していたが、2026年は函館などを回る。修学旅行の行き先が北海道に変わったことをどう受け止めているのか。「…

今回の登場人物 ​

  • 北海道観光機構: 学校向けの説明会や教員の下見を行い、北海道への教育旅行を誘致する団体です。
  • 関東地区公立中学校修学旅行委員会: 茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の5県で、修学旅行の計画輸送を調整します。今回参照する集計に東京都は入りません。
  • JR北海道: 北海道新幹線を使う修学旅行の拡大を進める鉄道会社です。
  • 計画輸送: 大人数の学校団体が同じ時期に移動できるよう、学校数、人数、方面、座席を前もって調整する仕組みです。
  • 函館方面: 函館市内だけでなく、大沼など道南の訪問先を組み合わせる旅行圏です。計画によっては青森側も候補に入ります。
  • オーバーツーリズム: 観光客の集中で、交通、住民生活、観光体験や旅行日程に支障が出る状態です。単に「人が多い」の一言より重い意味があります。

何が起きたか ​

FNNの記事は、2026年9月9日、東京都板橋区の中学生約200人が新函館北斗駅へ到着する様子を紹介しました。この学校は2025年度まで京都・奈良方面を訪れていましたが、2026年度に函館方面へ変更しました。

千葉県君津市立周南中学校の教員も、2027年度の候補地として大沼などを下見しました。記事では、9〜10月の関西の暑さと、混雑で予定した見学ができない心配を理由に挙げています。

北海道観光機構の数字としてFNNが報じたところでは、函館方面を訪れる学校は4年前の2校から、2026年度は8校へ増え、2027年度は31校が予定されています。増え方は目を引きます。ただ、この集計が関東全域の公立中だけなのか、「函館方面」にどこまで含むのかは、記事から完全には分かりません。全国の学校が一斉に方向転換した数字ではありません。

ここが本題 ​

修学旅行先は、魅力ランキングだけで決まりません。学校が求める条件を並べると、移動時間、費用、安全、学習内容、混雑、宿泊、食事、現地交通、悪天候時の代替案まであります。一つでも大きく崩れると、先生の「ここに連れていきたい」だけでは採用できないんです。

いや、ここがミソなんです。今回の変化は、暑さと混雑が学校の背中を押す力と、函館を選べるようにする輸送・受け入れ条件、その両方で見たほうが分かります。暑いから出発地を変えたい。でも、代わりの行き先へ学年全員を安全に運べなければ話は終わりです。引っ越し先を決めるのに、景色だけ見て水道と電気を忘れないのと同じですね。

暑さは本物の条件 ​

まず、暑さを軽く扱う必要はありません。気象庁の1991〜2020年の平年値では、9月1日の最高気温は京都32.0℃、函館25.3℃です。差は6.7℃あります。これは特定の旅行日の予報ではなく、熱中症の危険が自動的に消える数字でもありません。それでも、大人数を屋外で引率する学校にとって、気温差が行き先選びの材料になるのは自然です。

京都・奈良では、寺社や史跡を歩いて回る時間が長くなります。暑さで休憩が増えれば、見学時間や移動計画にも影響します。さらに人気地の混雑が重なると、予定通り回れない心配が出る。先生にとって修学旅行は思い出づくりであると同時に、安全管理つきの巨大な時間割です。1組だけ「あとで集合ね」で済ませるわけにはいきません。

ただし、「京都・奈良はもう無理」とも言えません。京都市は混雑予測の発信や修学旅行向けの交通商品を用意し、受け入れ改善を進めています。今も関西方面が圧倒的な主流です。函館の増加は、京都・奈良の退場ではなく、学校が比較できる選択肢が一つ育ってきた、と読むのが正確です。

新幹線が候補地を近づけた ​

さて、今度は地図と時刻表の話です。北海道観光の公式モデルでは、東京から新函館北斗まで約4時間25分。JR北海道は最速3時間57分と案内しています。列車やダイヤによる違いがあり、学校から駅、駅から宿までを含む時間でもありません。それでも、乗り換えを抑えて大人数を運べる鉄道は、先生にとって大きな材料です。

FNNは、修学旅行専用列車を使う学校が2026年度の7校から2027年度は19校になる予定で、特急料金が50%割引になると伝えています。ただし、割引の正式な制度名、どの料金・区間が対象か、適用条件は公開されたJR資料で確認できませんでした。ここは「半額だから函館が得」と断定せず、FNNが伝えた条件として扱う必要があります。

大切なのは、専用列車や団体枠があることで、一学年ぶんの席をまとめて確保しやすくなる点です。個人旅行なら1席取れれば出発できますが、学校旅行は100席、200席を同時に動かします。「まだ空いています」が200回続かなければいけない。予約画面なら、指が先に疲れます。

現地の受け皿も必要 ​

さて、無事に着いたら今度は現地です。FNNは、函館奉行所がクラス単位の予約に対応すること、縄文文化交流センターや北方民族資料館など学習先があることを紹介しています。ホテルの事例では、2027年度に関東の13校、435室を受け入れる計画で、宴会場は最大400人規模とされます。

これは「函館全体で何校でも受け入れられる」という意味ではありません。ホテル、貸切バス、食事会場、ガイドが同じ日に足りるかは別です。函館山では30分以上の待ち時間が出ることもあるとFNNは伝えています。北へ行けば混雑まで涼しく消える、というわけではないんですね。

北海道観光機構は、関東の教員を招く2泊3日の下見事業を行っています。候補には五稜郭、函館山、元町、青森の三内丸山遺跡などが入ります。2026年8月に埼玉県で開いた説明会には、FNNによると9校が参加しました。旅行先の変更は突然のひらめきではなく、現地側が学習内容と移動手段をセットで売り込み、先生が前年から下見して成立するものです。

8校と7校を混ぜない ​

ここで、数字を同じ箱へ入れないようにしましょう。FNNは北海道観光機構の数字として、2026年度8校、2027年度31校予定と伝えました。一方、関東地区公立中学校修学旅行委員会のまとめを報じた教育家庭新聞によると、2026年度の計画輸送は742校で、北海道方面は7校、740人。関西方面は711校、9万9743人でした。

こちらの742校は茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の5県が対象で、東京を含みません。だから、8校と7校を同じ母集団の増減として比べてはいけません。板橋区の学校が差の理由かもしれませんが、公表資料だけでは確定できません。

そして5県の数字を見る限り、北海道方面7校に対して関西方面711校です。動きは興味深いものの、現段階では主流交代ではありません。小さな母数から新しい選択肢が伸び始めた局面です。2校から31校予定という倍率だけを見て、「全国で京都離れ」と大きく言うのは、苗が伸びたのを見て森が完成したと言うようなものです。

日本の意味と次に見ること ​

このニュースは、猛暑が学校行事の地図を変える可能性を示しています。同時に、気候だけでは地図は変わらず、鉄道会社、観光地、ホテル、教育施設が大人数を受け止める仕組みを作って初めて代替先になることも教えます。

次に見るべきは、2027年度の31校が実際に訪れるか、その後も増えるかです。1人当たり総費用、学校から宿までの所要時間、悪天候時の代替輸送、ホテルやバスの収容力も必要です。「涼しい」「新幹線で一本」に加えて、旅行全体が安定して回るかを確かめたいところです。

まとめ ​

関東の公立中学校が函館方面を選び始めた背景には、関西の暑さと混雑への懸念があります。でも、暑さだけで数百人の修学旅行は動きません。北海道新幹線の団体輸送、料金、学習先、宿泊施設、現地側の下見支援がそろい、函館が「行きたい場所」から「実際に行ける場所」へ近づいたことが重要です。

一方、2026年度8校と2027年度31校予定は、範囲の定義に未確認部分がある小さな母数の数字です。関東5県では742校中、北海道方面7校、関西方面711校でした。今言えるのは、全国的な京都・奈良離れではなく、学校が比較できる選択肢の条件が整い始めたこと。大きな船が、ようやく少し舵を切れるようになった。まずはその段階です。

Sources ​