北海道の標茶町で、警報機も遮断機もない「第4種踏切」で列車とトラックが衝突しました。こう聞くと、正直まず出てくる感想は「いや、そこはもう早くなくそうよ」ですよね。かなり自然な反応です。

ただ、このニュースをそこで止めると、半分しか見えてきません。第4種踏切が残るのは、危険性が知られていないからだけではなく、農地や住宅へ向かう生活道路として代わりがつくりにくく、閉じるにも直すにも地域の合意が重いからではないか。今回の本題はそこです。

【検証】踏切事故多発…警報機も遮断機もない「第4種踏切」の危険性 「危険だけど生活に必要」な現場が抱える課題とは | TBS NEWS DIG (1ページ)
【検証】踏切事故多発…警報機も遮断機もない「第4種踏切」の危険性 「危険だけど生活に必要」な現場が抱える課題とは | TBS NEWS DIG (1ページ)

オホーツクを走るJR釧網線で、立て続けに、列車と車の衝突事故が起きました。現場は、地元では「魔の踏切」とも呼ばれる場所で、なぜ事故が繰り返されるのか、検証します。「申し訳ございません。バスはこちらにな… (1ページ)

今回の登場人物

  • 第4種踏切: 国土交通省の区分で、遮断機も警報機もない踏切です。道路を渡る人や車が、自分で安全確認をしきらないといけない、機械の助けがほとんどない踏切です。
  • 第1種踏切: 遮断機と警報機の両方がある踏切です。多くの人が普段思い浮かべる「普通の踏切」は、だいたいこちらです。
  • JR北海道: 北海道で鉄道を運行する事業者です。報道では、2024年度末時点で第4種踏切が71か所残っています。
  • 地方踏切道改良協議会: 国、鉄道事業者、道路管理者、自治体などが集まって、踏切をどう改良するか相談する場です。国交省は、第4種踏切の解消でこの場の活用を促しています。

何が起きたか

TBS NEWS DIG(HBC北海道放送)によると、8月5日、北海道標茶町のJR釧網線の第4種踏切で普通列車とトラックが衝突しました。けが人はいませんでした。

ただ、ここで終わらないのが重いところです。報道では、この事故の8日前にも、約3キロ離れた別の第4種踏切で列車と車の衝突が起きていました。さらに、今回の8月5日の事故現場では2024年にも事故があったとされています。

もちろん、これだけで個別の事故原因をひとまとめにはできません。運転者の判断、見通し、周辺環境、列車の接近の見え方など、事故ごとに確認すべきことは違います。事故原因の断定は禁物です。

それでも、「第4種踏切で事故が繰り返し話題になる」こと自体は、仕組みとしての弱さを考えざるをえない材料です。

ここが本題

第4種踏切が残る理由を、「危ないのに放置しているから」とだけ読むと、話がかなり平らになります。危険なのは、関係者も認識しています。問題は、その先です。なくす、迂回路をつくる、第1種化する。そのどれもが、地域では案外すんなり進まないんです。

要するに、論点は安全意識クイズではありません。生活道路の必要性と、改良や廃止にかかるお金と、関係者の合意形成をどう乗り切るか。そこが本丸です。

第4種の危険

国土交通省は、第4種踏切を「遮断機なし・警報機なし」、第1種踏切を「遮断機あり・警報機あり」と整理しています。第4種は、列車が来ることを機械が教えてくれません。つまり、道路側の人が目と耳で全部やる前提です。人間に求める仕事量が、最初から多いわけです。

全国の第4種踏切は、2024年3月末時点で2367か所あると報じられています。事故の危険性は、第1種踏切の約1.6倍から2倍弱とする報道もあります。ここは出典上、報道ベースの数字ですが、「第4種のほうが危ない」という方向はかなりはっきりしています。

危険性が高いのに、警報機も遮断機もない。言ってしまえば、安全装置を薄くしたまま現場判断で回している状態です。交通量が少ない踏切も含まれるからこそ、一律の対策ではなく、場所ごとの優先順位と方法を決める必要があります。

なぜ閉じられない

では、危ないなら全部閉じればいいのか。理屈だけならそう見えます。でも、現実はそこで止まりません。

2021年11月30日の国土交通大臣会見では、第4種踏切の解消に向けた議論や合意形成を、地方踏切道改良協議会などで促す必要があると説明されました。農地に行く道、家に戻る道、地域の細い移動線。地図で見ると細い一本でも、使う人には毎日の足です。本人にとっては「代わりに大通りをどうぞ」で済まないことがあるんですね。

2024年4月16日の大臣会見でも、国交省は第4種踏切について、統廃合の促進や、第1種踏切化の促進を進める考えを示しました。解消には鉄道事業者だけでなく、道路管理者や自治体、地域の利用者も関わります。

JR北海道については、報道で2024年度末時点の第4種踏切が71か所とされています。踏切を1本閉じる話が、ただの設備整理ではなく、暮らしの動線の組み替えになる場面がある。ここを飛ばして「閉めれば終わり」と言うと、現場の難しさが消えてしまいます。

費用だけではない

しかも、第1種化にはお金がかかります。報道では、1か所あたり1000万円超で、その後の維持管理費も必要だとJR北海道が説明しています。国には改良費を最大半額補助する制度があると報じられていますが、維持管理まで全部肩代わりしてくれるわけではありません。

ここで「じゃあ金だけの話か」と言うと、それも少し違います。国土交通省は踏切の改良方法として、立体交差化、保安設備の整備に加え、周辺の迂回路整備も位置づけています。つまり、選択肢は「その場に遮断機をつける」だけではないんです。

ただし、迂回路を作るなら土地や道路の問題が出ます。踏切を閉じるなら、その先で困る人の納得が要ります。第1種化するなら初期費用と維持費の筋道が要ります。どの道を選んでも、最後は「誰が負担し、誰が不便を引き受けるか」に触れます。ここが一番もめやすい。関係者の利害がぶつかりやすい論点です。

暫定策と恒久策

今回の報道では、専門家が、廃止を前提にした暫定策として、手動の遮断棒やGPSを使った列車接近通知などを提案していました。番組内では、草刈りや見通し改善も話題になっています。

このへんは大事なので線を引いておきます。こうした案は、すぐに検討できる余地があるかもしれませんが、恒久的な解決策だとまでは言えません。効果が個別環境でどう出るかも、ここで断定はできません。

恒久策として国が位置づけているのは、統廃合、第1種化、周辺迂回路などです。つまり、「危ないから何か足す」は入口になっても、「最終的にその踏切をどういう形で残すか、なくすか」を決める話とは別です。ばんそうこうと手術を同じ棚に置くと、議論がふわっとします。

ニュースを見る観点

このニュースを次に見るときは、「第4種踏切は危険だ」で終わらせないほうが、だいぶ見え方が変わります。

見るべきなのは少なくとも四つです。代替路はあるのか。使っているのは誰か。第1種化や迂回路整備の費用を誰がどう負担するのか。暫定策と恒久策を分けて話しているか。この四つです。

事故のたびに「こんな踏切、まだあったのか」と驚くのは自然です。でも、本当に大事なのは、その次の一歩です。「なくすべき」から先に進んで、「なくすなら何が要るのか」まで考えないと、ニュースの核心に届きません。

日本の地方では、人口減少や財政制約が進む一方で、生活の足をきれいに整理できるわけでもありません。第4種踏切は、そのしわ寄せがかなりむき出しで見える場所だと言えます。かなり無口なインフラなのに、言っていることは重いんです。

まとめ

第4種踏切が残るのは、危険性を知らないからだけではありません。危険だと分かっていても、生活道路として代えにくい場所があり、廃止にも第1種化にも費用と合意形成が要る。そのため、解消が進みにくい面があります。

だからこの問題は、注意喚起だけでは閉じません。必要なのは、地域ごとに「残すならどう安全を上げるか」「なくすなら代わりの道をどう用意するか」を詰めることです。第4種踏切のニュースは、単なる設備の古さではなく、地方の暮らしと安全をどう両立させるかという、かなり地味でかなり重要な宿題を映しているわけです。

Sources