市が大株主の会社に、市が2,000万円を貸す。駅前の建物には、店だけでなく子育てや介護につながる場所も入っている。だったら助ければいいじゃないか。そう思いますよね。ところが三田市議会は、その貸し付けを予算から外しました。
いや、ここがミソなんですよ。助けたい施設があることと、運営会社の借金返済に公費を追加で使ってよいことは、同じ問いではありません。今回は「なぜ議会は断り得るのか。そして断ったら、住民の利用する場所はどうなるのか」を考えます。

三田市のフラワータウン地区で商業ビルを運営する第三セクター「サンフラワー」が厳しい局面に立たされている。経営難で県からの借入金の返済ができなくなり、市は貸し付けて支援しようとしたが、市議会が認めなかった。田村克也市長は「経営破綻も想定される」としており、自治体が財政支援する三セクのあり方も問われる事態となっている。(谷川直生)
今回の登場人物
- 株式会社サンフラワー:三田市のフラワータウン駅前にある商業ビルの運営会社。市と民間が出資する「第三セクター」だ。
- 三田市:2025年に株式を買い増し、現在は75.2%を持つ筆頭株主。ビルの2階の一部も、会社とは別に所有している。
- 三田市議会:市のお金の使い道を審議する場。今回、会社への追加貸し付けを予算から削った。
- 兵庫県と高度化資金:ビル建設時に利用した中小企業向け融資の窓口と、その資金。今回の2,000万円は、会社が県へ返すお金の不足分に充てる案だった。
- 入居者と利用者:ビルの店舗や保育施設などで働き、通い、買い物をする人たち。会社の財務問題が暮らしと接するところにいる。
何が起きたか
神戸新聞は9月22日、サンフラワーの資金繰りと三田市議会の判断を報じました。会社が11月末に返す予定の県への資金は2026年度分で4,000万円。そのうち2,000万円を会社が用意できず、市は同額を貸す予算案を出しました。議会は9月18日、貸付金の項目を削る修正案を全会一致で可決しています。これは三田市議会の審議結果でも確認できます。
もともとの建設には約21億円の高度化資金が使われ、神戸新聞によれば、まだ6億3,000万円余りが返済されていません。数字がいくつも出てきますが、財布を分ければ整理できます。6億3,000万円余りは残っている借入金、4,000万円は今年度の返済予定額、2,000万円はそのうち今回不足した額です。議会が否決したのは、借入金の全額でも、ビルの運営費すべてでもありません。
貸すお金は「渡すお金」より軽いのか
市の案は「補助金をあげる」ではなく「貸す」でした。返してもらう約束のお金です。それなら市の負担はない、と言いたくなる。ちょっと待って、話はそこからです。返済できるかどうかが、まさに問題になっている会社へ貸すのですから、約束どおり戻らない可能性を考える必要があります。
家族や友人に貸すときだって、「いずれ返すよ」の一言だけでは額が大きいほど困ります。いつ、どんな収入から、ほかの返済と両立させて返すのか。公のお金なら、なおさら説明が要ります。ただし、今回の否決で市民が県への残額6億3,000万円余りを直ちに肩代わりすると決まったわけでもありません。会社の県への借金と、市が新たに会社へ貸そうとしたお金は別の関係です。反対に、市が貸し付ければ、その返済不能リスクを市が新たに持つことになります。
会社の財務が弱っている理由について、市が3月に公表した経営健全化方針は、過去の大型テナントの撤退による賃料減、現預金の減少、施設の老朽化などを挙げています。2024年度の経常損益は約1,478万円の赤字でした。これは今回の2,000万円の不足額と同じ数字ではありません。会社の稼ぐ力や手元資金、借金の返済という、別々の問題が重なっていると読むための材料です。
なぜ議会は止めるのか
ここで誤解しやすいのは、議会が会社への支援を最初から一切拒んできた、という読み方です。そうではありません。市は2025年にサンフラワーの持ち株を20%から75.2%に増やし、今年3月には施設修繕などのための1億1,200万円の貸し付けを予算に計上しました。その際、議会の附帯決議は、安全に関わる修繕の必要性を一定程度認めながら、再建計画や返済計画の提出、使途の説明を求めています。附帯決議は、予算と一緒に議会が示した注意事項です。
議会の今年度予算に関する決議も、同じ条件を改めて求めました。つまり、支えるなら「何に使う」「どう立て直す」「いつ返す」を見せてほしい、という姿勢は前から示されていました。今回の採決の個々の議員の理由を、公開された審議結果だけから一つに決めつけることはできません。ただ、追加融資を見送る判断を理解するには、この返済の見通しと公費の危険を確かめる役割が欠かせません。
市側にも、貸したい理由があります。経営健全化方針はサンフラワーをフラワータウン地区に重要な施設と位置づけ、修繕、運営体制、再建計画を段階的に支える方針を掲げています。県への返済が滞れば、会社の経営を立て直す話も難しくなるでしょう。借金の返済を放っておけば、施設の将来にも響き得る。市と議会は、地域を守りたい点では近くても、今回の貸し方を認めるかで判断が分かれたわけです。
お店と公共の場所は、どうつながる
サンフラワーショッピングセンターは、1993年に開業した駅前のビルです。神戸新聞によれば、飲食店、衣料品店、保育施設、学習塾、訪問介護ステーション、スイミングスクールなどが入ります。市内の小学生が授業でプールを使うこともあるそうです。「商業ビル」と聞いて買い物だけを思い浮かべると、この話を読み違えます。
その一方で、施設が役に立つことと、運営会社の経営方法が適切かどうかは別々に確かめる必要があります。たとえば校舎を守りたいからといって、建物を管理する会社に見通しのない貸し付けを無期限で続けてよい、とはなりません。財布に底がある以上、助け方も点検しなければいけないんです。
市が2階の約2,000平方メートルを所有し、交流スペースを設けている点も大切です。市が会社の株を持つことと、市がビルの一部を直接所有することは違います。もし会社の経営がさらに悪化した場合、店舗の営業や建物の管理、市所有部分の利用をどう続けるかは、契約や運営体制を確かめて決める話です。貸付金を削った瞬間に保育施設やプールが閉まる、とまでは確認されていません。他方で、市長は経営破綻も想定されると述べています。利用者には「今すぐ全部止まる」と煽らず、「どう続けるかを決める必要がある」と伝えるのが正確でしょう。
次に確かめるべき三つのこと
第一に、11月末の県への返済を会社がどうするのか。別の資金を探すのか、県との返済条件の協議が進むのか。否決だけで問題が消えたわけではありません。
第二に、再建計画の中身です。テナント賃料や施設の修繕費を見込んだうえで、会社がこれからどう現金を作り、返済するのか。市の方針は2028年3月までの段階的な支援を掲げていますが、今回の議会判断を受けて、計画と資金の説明はさらに重くなります。
第三に、利用者への道案内です。会社の経営が変わった場合、店、保育施設、介護の拠点、プール、市の交流スペースは、それぞれ誰がどう守るのか。全部を一緒くたに「閉鎖」と呼ぶ前に、施設ごとの運営者と代わりの手段を示す必要があります。
まとめ
今回の2,000万円は、三田市が大株主の会社に、県への返済不足を補うため貸そうとしたお金でした。市議会はその項目を予算から削りました。そこには「地域の施設を守りたい」と「返済の見通しなしに公費の危険を増やせない」という、どちらも住民に関わる問いがあります。
大事なのは、会社を助けるか見捨てるかの二択にしないこと。会社にいくら貸し、どう返してもらうか。そして、万一うまくいかなくても、住民の使う場所をどう続けるか。別々の紙に書いて確かめる。その二枚を重ねて初めて、この2,000万円の意味が見えてきます。