閉園前最後の大きな祝日となった2026年9月23日、淡路ワールドパークONOKOROには、通常の約6倍の来園者が集まった。「そんなに来るなら、続ければいいのでは?」。うん、まずそう思いますよね。

ところが園は、11月30日で営業を終える予定だ。理由は、建設から41年たった施設の老朽化。園長によると、約12年間の修繕費は累計5億円を超えたという。

ここで比べている二つの数字は、時間の長さがまるで違う。6倍は一日の人出。5億円超は12年にわたり、壊れた設備を直してきた積み重ねだ。一日の行列で、古い施設の時計を41年分巻き戻すことはできない。今回は、この少し切ない算数を順番に解こう。

「なくなる前に行きたい」思い出いっぱいの“ご当地遊園地”が閉園へ 「ONOKORO」や「どんぐり村」も 維持費高騰と老朽化で閉園相次ぐ|FNNプライムオンライン
「なくなる前に行きたい」思い出いっぱいの“ご当地遊園地”が閉園へ 「ONOKORO」や「どんぐり村」も 維持費高騰と老朽化で閉園相次ぐ|FNNプライムオンライン

兵庫・淡路島の観光施設「淡路ワールドパークONOKORO」に、閉園前最後の大型連休を迎えた23日、多くの人が訪れた。施設は老朽化や維持費の増加などを理由に、2026年11月で閉園することが決まっている。全国で“ご当地遊園地”の閉園が相次ぐ中、思い出の場所を訪れる家族連れの姿が見られた。23日朝から開園を待つ家族連れの大行列ができていたのは、兵庫・淡路島の観光施設「淡路ワールドパークONOKORO」。詰めかけた人たちには、連休というだけではない深い理由があった。大阪からの来園者:「なくなる」って…

今回の登場人物 ​

  • 淡路ワールドパークONOKORO:兵庫県淡路市にある遊園地。1985年に開園し、記事公開時点では2026年11月30日の閉園が公表されている。
  • 兵庫県:土地と施設の持ち主。閉園後の土地や建物をどう使うか、民間事業者への調査を進めている。
  • 淡路市:県から施設を借り、市の「公の施設」として設置している。施設を廃止する条例案を市議会へ提出した。
  • 株式会社ONOKORO:指定管理者として遊園地を運営する会社。指定管理者とは、自治体の施設を任されて日常の運営や維持管理を行う団体のこと。施設の持ち主ではない。
  • 修繕と更新:修繕は壊れた部分を使える状態へ戻すこと。更新は古い設備そのものを新しい設備へ入れ替えること。今回の話では、この違いが主役だ。

何が起きたか ​

FNNプライムオンラインは、9月23日にONOKOROを訪れた人が通常の約6倍に上ったと報じた。閉園まで約2カ月。「なくなる前に、もう一度」と考えた人たちの列ができた。

同じ報道で、園長の清水浩嗣さんは、約12年間で修繕費が5億円を超えたと説明している。一つを直すと次の設備が壊れる。そんな状態が続いたという。これは監査済みの修繕明細ではなく、運営側が取材に説明した累計額だ。年度ごとの内訳や、誰がいくら負担したかまでは公表資料で確認できない。

一方、淡路市が9月議会へ出した条例案は、施設が建設から41年たち、設備の老朽化が著しく、営業継続には大規模な改修費が必要だと説明している。条例案上の施設廃止日は12月1日。営業の最終日はその前日の11月30日という整理だ。

ただし、9月24日時点では市議会の会期中だ。だから「廃止条例は成立した」とはまだ言えない。運営側が閉園予定を公表し、市が廃止案を議会へ出している段階、と押さえておこう。ここ、日付が近いので混線しやすいところです。

ここが本題 ​

約6倍も来たのに、なぜ続けられないのか。答えは、「6倍」が人気の瞬間を表す数字であって、将来の改修費を払えるかどうかを表す数字ではないからだ。

しかも「通常」の絶対人数は示されていない。平日の平均と比べたのか、休日の平均なのかも報道からは分からない。入園料収入、園内売上、その日の人件費や電気代も不明だ。6倍は関心の強さを伝える。でも、年間の黒字を証明する万能スタンプではない。

6倍は年間成績ではない ​

閉園前には、普段とは違う需要が生まれる。「いつでも行ける」が「今しか行けない」に変わるからだ。9月23日の列は、ONOKOROが多くの人に大切にされてきた証拠ではある。ただし、その特別な一日を12カ月分にコピーできるわけではない。

遊園地には、客が少ない日も安全点検が要る。遊具を動かせば電気代がかかる。スタッフも必要だ。さらに、古い設備では部品交換や検査の費用が重なってくる。来園者が増えた日の売上と、何年にもわたり続く維持費は、同じ時間軸に載っていない。

たとえば、テスト前日に普段の6倍勉強したとする。えらい。とてもえらい。でも年間の通知表がその場で6倍になるわけではない。遊園地の収支も、残念ながら一夜漬け非対応だ。

まあ、だから「6倍も来たのに閉めるのはおかしい」とも、「閉園するのだから人気がなかった」とも言い切れない。確認できるのは、閉園前の一日に強い需要があり、それとは別に、施設全体の老朽化が続いていたことだ。

修繕は若返りではない ​

では、5億円超も修繕したのに、なぜ古いままなのか。ええ、ここで「修繕」と「更新」を分けよう。

修繕は、壊れた部分を直して使える状態へ戻すことだ。更新は、古くなった設備一式を新しいものへ置き換えること。家なら、雨漏りした屋根をふさぐのが修繕で、屋根材を全部取り替えるのが更新に近い。ふさいだ穴は直る。でも、家全体の築年数はゼロに戻らない。

ONOKOROの5億円超は、約12年間に積み重なった修繕費だと説明されている。園全体を一度に新品へ替えた「5億円の全面改修」ではない。同じ時期に造られた設備が多ければ、一つを直している間にも、別の設備は同じように年を取っていく。修理担当からすれば、もぐらたたきの穴が遊園地サイズになったようなものだ。笑いごとではないが、仕組みはそれに近い。

観覧車の例は分かりやすい。MBSの報道によると、5,000万円を超える費用をかけて改修した後、約半年で別の部品が故障した。施設の公式サイトは2025年4月26日、観覧車を当面休止すると告知している。直した部分まで無意味だったわけではない。別の部品まで一緒に新品になったわけでもない、ということだ。

スマートフォンの画面を交換しても、電池や基板まで新品にはならない。観覧車はスマホよりずっと大きく、部品代も点検の責任も桁違いだ。部分修理を積み重ねれば営業をつなげるが、設備全体の年齢を巻き戻すことはできない。

市の条例案が「一つの遊具」ではなく、施設と設備全体の著しい老朽化、大規模改修の必要を理由にしているのは、この違いを示している。過去の5億円超は、営業を続けるために使われたお金だ。将来も続けるために必要な総更新費とは別物なのである。

持ち主と運営者は別 ​

さて、もう一つ大事なのが、ONOKOROは一つの会社だけで完結する施設ではないことだ。土地と施設を所有するのは兵庫県。淡路市が県から借り、市の公の施設として設置する。そして株式会社ONOKOROが指定管理者として運営する。

現行の指定管理期間は2012年11月1日から2027年10月31日までの15年間だ。日々の運営を会社が担う一方、施設そのものの将来は、県、市、会社の役割や合意にまたがる。閉園は、レジの前で「今日お客さんが多いから続行」と即決できる話ではない。

ただし、ここで注意したいのは、5億円超の負担者だ。公開資料だけでは、修繕の年度別内訳も、県、市、会社の負担割合も確認できない。「税金を5億円使った」「会社が5億円を全部負担した」と書けば分かりやすいが、根拠がない。分かりやすい間違いは、やっぱり間違いである。

兵庫県は閉園方針の公表後、土地と建物の今後の活用について民間事業者の意向を聞く市場調査を始めた。これは跡地利用の可能性を探る手続きで、同じ遊園地の営業継続が決まったという意味ではない。建物を残すのか、別用途にするのかも含め、次の判断材料を集めている段階だ。

それで何が変わるのか ​

ONOKOROの閉園を考えるとき、来園者数だけを見ていると話を取り違えやすい。見るべき数字は少なくとも二種類ある。今日どれだけ人が来たか。そして、明日から何年、設備を安全に直し続けられるかだ。

ところが、これは遊園地に限らない。自治体が関わるプール、ホール、スポーツ施設でも、人気と更新費は別の問題になる。とはいえ、ここで全国の施設をずらっと並べる必要はない。ONOKOROだけでも、6倍の来園と5億円超の修繕が同時に本当であり得ることは、十分に見えてくる。

今後確認したいのは、市議会が廃止条例案をどう扱うか、閉園後に県が土地と建物をどう使うか、そして修繕費や大規模更新費の詳しい内訳が示されるかだ。思い出の多さを金額へ直すことはできない。だからこそ、継続判断では数字の意味を丁寧に分ける必要がある。

まとめ ​

ONOKOROに通常の約6倍が訪れたのは、閉園前の一日に強い需要があった証拠だ。一方、5億円超は約12年間、壊れた設備を順番に直してきた累計で、41年たった施設全体を新品にする費用ではない。二つの数字は矛盾していない。見ている時間の長さが違うのだ。

行列は今日の人気を映す。閉園の判断が問うのは、明日から何年、直し続けられるか。古い施設のニュースでは、この二つを同じ電卓に入れないことが大切なんです。

Sources ​