「10月から電気代が1,300円以上上がる」と聞けば、燃料が急にそれだけ高くなったのかと思いますよね。家計の話ですから、数字だけでも胃にずしんと来る。

でも、ちょっと待って。関西電力が示した標準モデルの増加額は1,318円。その内訳は、政府支援が終わる影響の910円と、送配電網を使う料金などの見直しによる408円だ。燃料費調整の欄も大きく動くが、そこには補助の引き算が入っている。今回は、この「同じ欄に別の理由が住んでいる」ややこしさを、順番にほどいていこう。

「例を見ない値上げに近い」10月から電気代が標準家庭で1300円以上値上がり さらなる節約に励む人も 米農家は秋の収穫期の電気代が通常の7倍「価格転嫁していくしか」|FNNプライムオンライン
「例を見ない値上げに近い」10月から電気代が標準家庭で1300円以上値上がり さらなる節約に励む人も 米農家は秋の収穫期の電気代が通常の7倍「価格転嫁していくしか」|FNNプライムオンライン

物価高が続く中、聞かない日はない「値上げ」。帝国データバンクによると、10月1日から値上げが予定されている飲食料品は3000品目を超えています。その波は、“お手頃価格”が売りの外食チェーン『鳥貴族』にも…鳥貴族は長年全品300円台を維持してきましたが、今回の値上げで初めて400円台に。また、関西電力は9月29日、来月使用分の電気代が標準家庭で1300円以上“値上がり”することを発表しました。この値上げに、専門家は「例を見ない値上げに近い」と指摘します。また家庭だけでなく、農家にも重くのしかかる…

今回の登場人物 ​

  • 関西電力:近畿地方を中心に電気を販売する電力会社。今回、2026年11月分の電気料金について、標準モデルの試算を公表した。
  • 燃料費調整:原油、液化天然ガス(LNG)、石炭などの輸入価格の変化を、一定の時間差で電気料金へ反映する仕組み。今月使った燃料の値段を、その場でレジ打ちする制度ではない。
  • 電気・ガス料金支援:国が小売事業者を通じて料金を値引きする制度。2026年9月使用分の家庭向け低圧電気は、1kWhあたり3.5円が差し引かれた。
  • 託送料金:発電所から家庭へ電気を運ぶ送配電網の利用料。電気料金に含まれており、2026年11月1日からの見直しが小売料金にも反映される。
  • 従量電灯A:関西電力の家庭向け規制料金メニューの一つ。今回の8,251円は、この契約で月260kWhを使うモデルで計算されている。

何が起きたか ​

FNNプライムオンラインの関西テレビ記事は10月1日、関西電力の標準的な家庭モデルで、10月使用分の電気代が前月より1,300円以上上がると報じた。

関西電力の公表資料では、2026年11月分料金が8,251円、10月分料金が6,933円。差は1,318円だ。ここでいう「11月分」は、10月に使った電気が主に反映され、11月に請求される料金として報道されている。前の「10月分」は、関西電力の注記では2026年9月使用分だ。ニュースが出た10月1日に、全員の口座から突然1,318円多く落ちる、という話ではない。

さらに、8,251円は「全国の平均世帯が実際に払う額」でもない。条件は従量電灯A、月260kWh、口座振替割引55円、再生可能エネルギー発電促進賦課金1,086円、消費税相当額込み。同じ関西電力でも料金プランと使用量が違えば、金額も増え方も変わる。

1,318円を二つに割る ​

関西電力の資料は、1,318円の内訳をはっきり書いている。

  • 910円:10月分料金に入っていた国の料金支援が、11月分ではなくなる影響
  • 408円:11月1日からの託送供給等約款の変更に伴う電気料金の見直し

足すと910円+408円=1,318円。いや、算数は小学校ですが、請求書はなかなか小学生向けに話してくれないんですよ。

910円は、支援単価の3.5円に標準使用量260kWhを掛けた金額だ。3.5円×260kWh=910円。国の支援は2026年7月、8月、9月使用分の3カ月で、家庭などの低圧は7月と9月が1kWhあたり3.5円、8月が4.5円だった。10月使用分は対象外なので、値引きが外れる。

残る408円は燃料の話ではない。電気を送る送配電設備の利用料である託送料金の見直しなどを、関西電力の小売料金へ反映した分だ。従量電灯Aでは最低料金と各段階の電力量料金が改定される。つまり今回の上昇は、「補助が消えた」と「料金の土台が変わった」が同じ月に重なったのである。

燃料費調整が3.50円動いた正体 ​

では、燃料費調整はどこへ行ったのか。ここがいちばん紛らわしい。

従量電灯Aなどの規制料金では、10月分の燃料費調整単価は1kWhあたりマイナス1.26円、11月分はプラス2.24円。見た目では3.50円上がっている。260kWhなら、まさに910円だ。

ところが10月分のマイナス1.26円は、支援前のプラス2.24円から国の3.5円を引いた後の数字である。

プラス2.24円-支援3.50円=マイナス1.26円

11月分は支援がないので、プラス2.24円へ戻る。つまり、燃料費調整欄の3.50円差は、今回については燃料価格そのものが1kWhあたり3.50円上がった差ではない。補助という引き算がなくなった差だ。名札は「燃料費調整」でも、その欄には政府支援まで同居していたわけです。ここ、名札だけで中身を決めると迷子になります。

燃料価格は上がった。でも1,318円の直接内訳とは別 ​

もちろん、燃料価格の動きが無関係という意味ではない。関西電力が規制料金の計算に使った平均燃料価格は、10月分の5万3,500円/klから、11月分の5万5,900円/klへ上がった。これは原油、LNG、石炭の価格と構成を基にした値で、参照する期間も10月分は2026年5~7月、11月分は6~8月だ。少し前の輸入価格が、時間差でやって来る。

ただし、従量電灯Aなどには燃料費調整に使う平均燃料価格の上限があり、今回は両月とも4万700円/klを超えていた。そのため、支援を引く前の燃料費調整単価は、10月分も11月分もプラス2.24円で同じだった。少なくとも、この標準モデルの前月比1,318円については、平均燃料価格の上昇分がそのまま追加請求になったわけではない。

入口記事では専門家が、値上がりの大きな背景として国際紛争と燃料代を挙げている。国際情勢が原油やLNGの価格へ影響する経路はある。しかし、関西電力の資料は3カ月の平均燃料価格を示すだけで、戦争、為替、需給などの寄与を一つずつ分解してはいない。だから「1,318円は戦争が原因」と一本線で結ぶのは強すぎる。確認できる直接の内訳は、支援終了910円と料金見直し408円までだ。

「農家の7倍」は値上げ率ではない ​

もう一つ、数字の交通整理をしておこう。入口記事には、米農家の秋の電気代が通常時の7倍になるという事例も出てくる。

これは電気の単価が10月から7倍になる、という意味ではない。取材された農家では、収穫期に7台の乾燥機を動かすため、通常時より電気の使用量が大きくなるという個別事例だ。そこへ料金単価の上昇が重なるので負担は重い。しかし、「標準家庭は1,318円増」と「農家は通常の7倍」を掛け合わせたり、7倍を今回の値上げ率として扱ったりしてはいけない。

家庭でも同じだ。260kWhは比較用に固定したモデルで、節電した家庭、在宅時間が長い家庭、オール電化の家庭では請求額が違う。今回の数字は、自分の請求額を予言する占いではなく、同じ260kWhなら制度変更がどれだけ効くかを見る定規なのである。

請求書ではどこを見るか ​

11月の請求を見て「思ったより増えた」「逆に1,318円も増えていない」と慌てる前に、三つ確認したい。

一つ目は使用量。前年同月や前月とkWhが違えば、総額だけでは単価の変化を比べられない。二つ目は契約プラン。従量電灯A以外では燃料費調整や料金改定の形が異なる。三つ目は、明細の燃料費調整額と、国の支援が適用された月かどうかだ。

節電は請求額を抑える助けになるが、今回の1,318円をすべて家庭の工夫だけで吸収すべきだ、という話にはしない。910円は政策による値引きの終了、408円は料金制度の変更だ。まず原因を分ける。そのうえで、自分の使用量と契約に引き寄せる。順番を逆にすると、家計の努力不足という話にすり替わってしまう。

まとめ ​

関西電力の標準モデルでは、10月使用分に相当する11月分料金が8,251円となり、前月の6,933円から1,318円上がる。条件は従量電灯A、月260kWhなどで、すべての家庭の請求額を示す数字ではない。

増加の内訳は、政府支援の終了が910円、託送料金などを反映した料金見直しが408円。燃料費調整単価はマイナス1.26円からプラス2.24円へ動くが、その3.50円差は、支援の引き算が外れたことによる。平均燃料価格は上昇したものの、規制料金では上限に達しており、支援前の単価は両月ともプラス2.24円だった。

要するに、「燃料高で1,318円」では粗すぎる。補助が消えた分、送配電料金などの見直し分、燃料価格の動き。この三つを別々の引き出しへ戻す。そこまでできると、請求書の数字に驚くだけでなく、何が変わったのかを自分の言葉で説明できるんです。

Sources ​